curious intermission2

　　　intermission 2　"いんてるめっつぉ・どーす"

『…現状を報告。第三隊損害甚大なれど、敵拠点α-14を陥落。引き続きα-15の攻略に移行する。第四隊、および第五隊の増援を求む』
『残存航空兵力18654、一八六五四』
『こちら輸送部。前線B77。輸送車両が足りん。どんなのでもいから回してくれ。繰り返す、どこの誰でもいいから一台でいい、よこしてくれ。繰り返す…』

『…ガーフ。聞こえるか？　ガーフ？　こちらオーパス』

　黄色い回転灯がともる。指先…しかし人間のものではない…で操作盤をいじる。
「ガーフだ。どうなった？」
『敵拠点β-23を陥落』
「何台残った？」
『こちらは862を確認。うち大破139、中破23』
「撃破数は？」
『おおよそ1600』
「ほぼ同数か」
　少し、雑音が混じる。が、すぐに『ああ、それくらいだ』とやや安心したような声。
『敵拠点は完全に沈黙』
「戦果確認官を派遣させる。そのまま待機」
『了解』

「…オーパス」
『なんだ？』
「命はいくつ残った？」
『…今回は最初が10だったから、少し多いかな。4残った』
「では今回はまだあちらへは行けないな」
『…そうだね』
「しばらく休め。すぐに次の作戦が始まる」
『了解』
　黄色の回転灯が止まって消える。

『ずいぶんと丸くなったものね。以前は氷のガーフとか呼ばれていたのに』
　操作盤のスピーカーから声が聞こえる。機械的にも聞こえる高い声。
「まあ、そう言うな、ヒース。何事につけ物事は変わっていくものだ…」
　座席の上にはヒョウよりはむしろピューマのような大型の猫が座っていて、肉球のある前足で器用に操作盤を操作している。

『あの子をあっちへやったのは雪解けみたいなものなのかしら？』
「…まだ続けるか、その話」
『それとも…母親みたいな感情？』
「そんな感情、我々にあると思っているのか？」
『ないこともないわね。そうでしょう？　ねえ』

『旅人さん？』

「パーソナル端末というのも良し悪しだな。余計なことまで覚えてしゃべってくる」
　大きな牙のある大きな口で、大きなため息。
『そんなこと言って…本音じゃ嬉しいんじゃないの？　あの子が変わっていくのが？　…成長しているみたいなものだものね』
「全くどうでもいいことをべらべらと。我が第六隊の補充兵力は？　敵拠点β-35の制空権は得ているのか？　どうなっている？」
『もう全部整えてあるわ。操作盤のモニタに表示してあってよ？　見えないのかしら？』
　ふふふ、と小さな笑い声。
『あの子のことばっかり』
「…黙れ」
　また、ため息。

『補充兵力が完全に揃うまでしばらくかかるわ。…渡るの？』
「…そうだな。少し、頼めるか？」
『あまり長くは無理よ。どこに行くの？』
「ちょっと気になることがあってな。…キョウコの世界だ」
『じゃあ、お土産持っていかないといけないわね。…あら、商品だったかしら？　いくつか用意してあるわ。座席の後ろ。持って行ってね？』
「いつも済まないな」
『気にしないで。こちらは操縦者総合支援システム端末・ヒース。あなたのための端末なんだから』

「じゃあ…」
　大きく息を吸い込む。軽く目をつぶる。
「行ってくる…！」

　その大型の猫は、周囲に小さな白い光をいくつもいくつも灯したように見えた。まるでネズミを狙うかのようにゆっくりと両前足を揃えて構え…すばやくジャンプする。しかし着地する瞬間、荷物を背負って黒い衣をまとった女性の姿に変わったようにも見えた。だがそれもろとも見えなくなってしまった。