「そう考えるとさ、なんか…ビミョーだよね」
「びみょう…？」
「だってさ、じゃあそんな誰かが作った世界にいるあたしらってさ…何なんだろって思わない？ その誰かさんが勝手に作った人形とかそういうことにならないかな、とか…思わない？」
やや意味ありげな笑みをうかべたまま、今度はその机に肘をついてあごを乗せてくる。
「何そのてつがくてきなお話。にあわなーい」
「へっへ。たまにゃあたしだってこんなこと考えるんだよーだ」
でも未来はちょっと考え込んでしまう。
…考えたこともなかった…でも、たしかにそうだ…
「作った人がはっきりしている世界もあるって言ってたっけ…」
「あのネコさんが？」
「そう。たしか…」
えっと…こう、後天…世界？
そこでチャイムが鳴ったので皆自分の席に戻っていったのだった。
昼休み。さてご飯はどうしようか…お弁当はあるのだけど（真記はまたあの個性的？なお弁当である）、かしこが「きょうはがくしょくにするの」と言うので何かちょっと追加してもいいかな、とか思っている。
そこで三人、そろって教室を出た時に…。
「ちょっと、いいかな」
背後から思わぬ声がかかったのだった。
周りは昼休みということでざわついているのだけど、はっきりとした声。
「はい？」
「みー…いや、福田さん」
声をかけられたのは自分だ、と未来が気づくのに少し、時間がかかった。
呼びかけてきたのは…背の低い、小柄な女子。胸章や雰囲気からすると上級生だろうか…でもどこかで会ったような気がする。
「少し、時間ある？」
親指を後ろへ向けて見せる。何となく好戦的？にも見えてしまう仕草だが、当人に自覚はないだろう。そのせいか非常にくだけた印象を受ける。
「あの、失礼ですけど…」
未来の後ろから隠れるように声をかける…真記。実は「年上」に弱かったりする。
「あ。ごめんごめん。あたし。あー…そっか。阿多根。阿多根美咲」
啓児の言っていた「あたねせんぱい」である。同時に先守のクラスメートで…あの時のウェイトレスさんだ、と。
「えっと、あの、どうも」
ぺこり。
「やだ、何それ、やめてよ。…もう、相変わらずなんだから」
「？」
「その、あの」
かしこがおずおずと声を上げる。
「いどう…しませんか？ かしこたち、学食にいくので…よかったら、いっしょに」
出入り口の真ん前で四人、ごちゃごちゃやってるのである。そりゃあ…ジャマ、というものである。
…そうは言っても学食も混んでいるのである。昼休みなのである。生徒全員が一斉に押し寄せてくる、というわけではもちろんないのだが、それでも混むものは混んでしまうのである。
「お待たせ。キミも弁当持ってきてるんだ？ じゃあ…これ、いっとく？ そっちの子はサンドイッチだったよね？ みー…いや、福田さんはこれでいいかな？」
「あ、はい…ありがとうございます」
あの人ごみの中へ何のためらいも何もなく突っ込んで行き…しかも何事もなかったかのように戻ってきたのである。
…慣れてる…のかな、こういうの。
パワフルと言うか何と言うか。丸ですばしこい魚が派手に泳ぎ回っているみたい、とか思ってしまう。
真記とかしこもお礼を言うと、阿多根先輩は「いいのいいの、気にしなさんなって」と未来の横に腰を下ろして自分の分のパンを取り出す。
学食の中も混雑しているのである。とても椅子に座れるような状態ではないので…外にあるコンクリートの出っ張り。これに阿多根先輩・未来・かしこ・真記の順で座っている。一応？ベンチみたいなものもいくつかあるのだけど、それすらもいっぱいで生徒であふれかえっているのだ。
