手紙の内容からは失敗はするけれど渡ることはできるようになった、と読むことができる。
…もう、そこまでいけるようになってる、ってこと…？
「みーくん…」
心配そうな阿多根先輩の声に、はっ、とする。
「いえ、はい、だいじょぶです。…だいじょぶ」
…わたし…
今、どんな顔になってたんだろう…？
「もうちょっと、読んでてもいい？」
「もちろんっス」
「じゃあさ…三輪っち」
「うッス」
「返事、書いてやってくんない？」
「そりゃそのつもりッしたけど…」
「ちょっと書いておいて欲しいことがあるんだ。あんたが書いた方がいいっしょ」
「問題ないっスよ。で、なんて書くっすか？」
「そりゃあ…ね」
ちら、と未来の方を見る。
「近況とか最近あったこととか…」
「両方とも同じッス」
「うっさい」
もう一度、未来の方を見る。
さっきまでは立っていたのだけど、木の箱（ほこりっぽい）に浅く、正に腰を掛けるような姿勢。身体を「く」の字に曲げて腰に体重をあずけている。その左手に啓児からの手紙を持って、右手は人差し指で文字を追うような様子。視線は…手紙の上から外さない。
と、手紙を一回引っくり返して…裏面を見てみたりして…また表面に戻っている。
「とにかくさ…今日のこととか書いといてよ」
「はあ…」
肘の辺りをぐい、と引っ張って耳打ち。
「察しろ察しろ」
「ああ、アネさんのことっスか」
「ば、バカ、口にすんなっての」
当の未来はそれに気づいてない様子。今度は上体をもっと伸ばして、右手を膝に添える。
ちょっと気になるところも、ある。
…あの人って誰なんだろう…？
短い手紙である。ここから啓児の気持ち全部を汲み取れるとは思えない。でもこの「あの人」って…？
…なんで、ここだけこんなに気になるんだろ…？
その週末。またあの遊園地に行ってみることになった。
阿多根先輩経由で連絡が来たのだった。…家に電話。夕方頃のこと。羽佐人も明夫も、先守も揃っている夕食時で…電話を取ったのが先守。
「…んえ、あー…」
なんか妙な声だな、とみんな思ったのだけど。
「未来、電話。…美咲から」
「わたし？」
もしもし、と受話器に耳を近づけてみると…
『…ったくさっきーもここんとこねえ、ちょっと冷たいんだからいいかげんそろそろさ、デレてくれてもいいじゃんそんなもんでしょだって全然知らない仲ってわけでもないしさそれにうちの方にも来てくれるのはいいけど上がってってくれてもいいじゃんねえそうじゃない…』
「あ、あー…みー…ちゃん…？」
『…はうわああ！』
何やら何かが崩れて落ちるような、どすん、とか、がたん、とかそんな音まで聞こえてくる…。
『ご、ごめ、ごめん。みーくんがこうすんなり出てくるとは思わなくてさ、あははは…』
