改めてよく見てみると。
…ディクシィって結構小さかったんだなー。
とかそんなことも思ってしまう。自分よりも背が低いし、もちろん真記と比べたらかなり低く見えてしまうし。かしこ…よりもちょっと高いくらいだろうか。
『あ。なんかミョーなこと考えてない？』
うふふ、とちょっと何かを含んだような笑み（この辺は年相応とも言えるかも）。
『あんなおばさんがこんなちんちくりんよくやってるなあ、とか？』
「え、いや、まあ…その…」
たしか？に陽子さんの外見は、まあ、そんな…とこではあるし。あの明子さんの姉、ということはやはり年上、ということになるのだし。
『あっはは。ミライはやっぱり素直で正直でいいなあ…でもさ』
足を組んでちろり、と見上げてくるような、しかしそれでもどこか重い仕草。…やっぱりこの辺が年相応なのか…も？
『旅人ってさ、そんなんばっかだったでしょ？』
「まあ…たしかに」
実際、今まで会ってきたのは外見がアテになんない連中ばかり。中身の方がとんでもない連中ばっか、という言い方もできるが。
『それはミライにも言えるってことだね』
「…え？」
…それは、どういう…
『ま、いいや。ちょっとマジメな話もしておかないといけないかな、と。伝言もあるし』
…でんごん。
『あたしがナンタイコウに渡ったのはね、少し事情があって渡ることになったの。それまでも一応は旅人やってたんだけど…ね』
足を組んだ姿勢のまま、軽く背を曲げてうつ伏せになるような、それでも下から見上げてくるような、そんな恰好。ディクシィと未来の背格好からするとこれは別にどうってことない関係性にも見える。しかし相手は自分よりかなり年上の女性なのだ。
…母さん…くらいなのかな…？
『キョウコさん。あの人に会ってからかな。ちょっち…変わったのは』
…きょうこ…さん…
それが自分の母親の名前だ、ということに気づくまで少しの時間がかかってしまう。
「…あ」
すると、今度は大きく上を仰いで…ため息。はーーーーっと。
『やーっぱり持ってかれてるんだ。…メイジの言ってた通りなんだ』
「めい…じ？」
『それほど多くはないケースだ、ってね。でも多いも少ないもあんまアテになんないかもね。だってミライも旅人なんだから』
やはり小さなその椅子の上から、じっっっーっと見上げてくる。
『あは』
…なんで笑うかな、そこで。
実際屈託のない…と言うか実際ウラなんかありそうもない笑みなのだ。
『そういう事例もあるってこと。そんな怖い顔しないしない』
思わず自分の頬をむにむにっと揉んでみたりしてしまう。…そんなにヘンな顔だったかな…。
『ミライはね、もっともっと知らないといけないんだ、うん。知って知って知って…そして考えなきゃ。その上で結論出さなきゃ』
「けつ…ろん？」
『そう。ミライがどうしたいかってね。ミライ自身が決めないとね』
両腕を大きく広げて…それでも未来ほどにはない…くるくるっと踊るように回って見せたりして。
『何だってできるんだよ？ どこに渡ってもいいし、何かどこかに影響を与えまくってもいいんだ…そうだ、新しい世界を創ってもいいんだよ？ ミライの好きな、ミライだけの世界』
「あたらしい…せかい？」
…わたしが？ そんなことを？
『そ。そういうこともできる。で…あ、そうだ、伝言あったんだっけ。忘れてた。えっとね…キョウコさんから』
…え。
いきなりだなあ。
『あのね。思った通りに進めよ、別に迷ってもいいから、って』
