…うわー…
どうしよ、というのが正直なところである。分霊のヒトたちはどうにかしてくれなんとかしてくれ、と視線をビミョーに反らしながら頼んできたりするのだが…未来だってこんな不気味なもん、どうにかできるとは到底思えない。
自分の手に負えないのならガーフとかこのみさん達にでも伝えてみて…とかそんな風にも思うのだが…『自分で何としろ』とか何とかそんな風に言われて終わりそうな…。
「？ どしたの？ ミライ？」
コマカンサが心配そうな目で覗き込んでくる。
「え、えー…あはは」
「なんか顔色悪いよ？ 疲れた？ そりゃああんだけ働いてりゃあね、じゃあ…さっさと用事済ませて宿の食堂に行こうよ？ あっちならお酒もないだろうしさ、何だったらあたしがおごっちゃうよ？ なんてね？」
まー、そんなにお金ないから高いのはダメね、あっははは…と笑っていたりするのだが。
その背後に『アレ』がうごめいていたりするものだから、どうにも反応のしようがない、と言うか何と言うか。
「あの…その、ね、コマカンサ…」
「ん？」
「ちょっと…聞きたいんだけど…」
「何？ どした？」
この広間のような空間にもリョンカの道具がいくつか置いてある。魔法装具を持っていない彼女からすると珍しいものばかりなのだろう、そういった器具を興味深そうに眺めていたりする。
「…んー…何て言うかな、自分一人でどうしようもできないことに当たったら…コマカンサなら…どうする？」
「ん…そりゃあ…」
その返答に未来だけではなく分霊のヒトたちの視線も集まっていることを、この小柄な少女は知らない。
「誰かどうにか出来そうな人に頼む」
…それができたら苦労しないんだけどなあ…。
「場長とかゼッシンとかユーサイとか。頼りになるもん」
「じゃあ…それが無理な状況だったら…？」
「んーーー…そおだねえ…」
んーーーーー、と考えて。
「あきらめる」
「いや、それは…ちょっと…」
「あきらめられないなら…頑張ってみるしかないっしょ？」
「…え…」
「できるだけのことはやってみる。その後のことはまたその時にまた決めたらいいじゃん？ なんとかなるかも知れないし、ダメだったら誰かに頼りゃいいし。でも今はとりあえずできることをできるだけ頑張ってみる。そういうもんじゃないの？」
…そっか。
目の前のうねうねを…いや、なんかホントはまじまじとは見たくはないのだけど…見てみる。
…頑張って…みる…？
『…やってみるのかい？』
『はい』
『そっか。…応援はしてるよ。まあ…何もできないけど、私たちは』
「コマカンサ」
「ん？ …ほんと、どしたの？ ミライ？」
「あのね、ここで見たことはみんなには黙っておいて欲しいの。どんなことがあっても」
…何が起きるか分からないけど。
「お、おう…うん、おう…」
大きく息を吸い込んで…吐く。そして…『アレ』にとりあえず手を触れてみる。うねうねぐにゃぐにゃ。…動いているのは間違いない、だけどそんなことに構っていられない。
…さて
触ってみることでも大きな情報を得られる。コレが一体何なのか、何の目的でここに在るのか、何がしたいのか、どうやったらいいのか…それを探るためにもまずは触ってみて確かめてみないといけない。そもそもなんでこんなものがこんなところに…？
…え
感じたのは…魔法力？ それとも精霊力？ 大きな力には違いない。しかしその力の質は…
『？』
