…えーーーーー？
ちょっと覗き込んでみたが…すぐに穴は閉じてしまう。そして一人取り残された形の…未来。
…うーん…
どうしよう？ というのが正直なところだったりする。…恐らくイントは啓児にあっちこっち渡りをさせて、その力量を計ろう、としているのだろう…と思われる。やり方としてはガーフなんかだったら多分そーするだろうなあ、というところだから、まあ、間違ってはいないだろう。
…それならだいじょぶ、なんじゃないかな
啓児がガーフの指導を受けていたのならそれくらいなんともないんじゃないか、と。あのガーフなんだし、イントの方がまだやさしいんじゃないか、と…
「ふぎゃ」
未来はリビングのソファに座って、窓の方をぼけっと見ていたのだが。背後の台所の方からそんな声が聞こえてきた。
「え？」
聞き覚えのある声。
「おう、次行くぞー」
「あふ」
こちらもそちらも聞き覚えのある声。
「最後に、こいつだ。…じゃな、頑張んな」
振り向いてみると…
「真記？ かしこ？」
未来は部活も何もないから普通に帰宅しただけだったのだが。二人はそれぞれ部活に入っているからまだ学校にいたはず。
「いてて…何？ 何が…って、あれ？ ここ未来んち？ かしこも？」
「…あー…まき？ みらい？ なんで…ここ…あれ？」
…まさか教室からそのまま連れてきたってこと…？
どうにもくすしさんらしい声も聞こえてきてたし。あの時ホントウに啓児を引っ張り出しそうしてイントに止められて…それで啓児がここに来るように仕向けて？たのだけど…多分めんどくさくなったんだろう、今度は直接力技で押し切った、とかそんなところかも知れない。
…あのヒトならやりかねないなあ…
ヒトじゃないけど。でもこれがくすしさんじゃなくてこのみさんだったら力技で無理やり、じゃなくてなんかもっとこう…ドス黒っぽい？やり方でここに来させていたような、そんな気がしてならない。どっちにしても迷惑なのは変わらないのだけど。
「だいじょぶ？」
「うん、まあ…」
とりあえず二人を起こしてソファに座らせる。
「ありがと。なんかねえ…こう、ピタって時間が止まったみたいな気がしてたら壁にいきなり引きずり込まれるんだもんなあ…誰？ あのヒト？」
「えっと、まあ…なんかそんな色々やってくれるヒト」
…なんだこの説明
「でもみらいの知ってるヒト、なんでしょ？」
「そりゃあ、まあ」
「じゃあもんだいない、かな？ ね？ まき？」
「…ったく、あの方は相変わらず乱暴だねえ…おいあんたら、大丈夫かい？」
「…ガーフ？」
見覚えのあるキジネコが頭をかいてから、くるっと、一回転してたりする。
「あれ？ ああ…やっぱり行く先はここだったのかい」
軽く匂いを嗅いでから…。
「それじゃあ啓児も…へえ…あの方も来てるのかい、じゃあちょっと大変かもねえ？」
と、とテーブルの上に腰を下ろすキジネコ。そして未来と二人の方を向く。
「あんたらをここへ呼んだのはさっきミライが言ったように色々できるお方でね。本来ならここまで大がかりで派手なことはしないんだろうけど…ここまでやるってことは、ちょっと、大変なことになってるってことなんだろうね？」
「うん。ちょっと…ね」
「わかった。それにはこの二人の協力が必要だ、とあの方は思ったんだろうさ。…よし、じゃあ…私は仕上げをやって来ようかね。ミライ、あんたは二人にきちっと説明しておやり。まだ何がなんだかよく分かってないだろうから。…じゃ、頑張んな」
そしてテーブルには小さな黒い穴が開いて…すうっとキジネコを吸い込むと…何事もなかったかのように穴は閉じてしまった。
