「うーーーん…」
「あ。起きた」
「よ。転校生」
軽く頭を振って…辺りを見回す。
「あれ…あ…」
テーブルの上に軽く腕を組んでしっかりと立っているイント。
『…ようやくお目覚めですか…』
これがガーフなんかだとどこか気品？のようなものが漂ったりするかも知れないのだけど…こちらは外見はただの子猫みたいなもの。だからどこか無理に背伸びをしているような印象を受けたりもする。しかしそれでも眷属には違いない。
「ああ…やっぱり僕じゃダメだったんだね…」
『…そりゃ、まあそうな…いやいや、あなた程度にしてはよく頑張った、と言っておきましょう。うん』
後半、どうにも歯切れが悪くなったのは、ちら、と未来の方を見たからなのは言うまでもない。
『…一応確認させていただきます。あなた方はミライさんを助ける意思がある、とそれは間違いないですか？」
「はいはい！ みきのためならできることはなんでもやっちゃうよ？」
「うん。かしこも、がんばる」
「僕も…うん、どんなことでも手伝うよ」
『…だ、そうですが、ミライさん？』
ちら、と未来を見る。…今度の「ちら」は先ほどとは違って強い意思が感じられる。
「うん」
未来も大きくうなずいて見せる。
『…全部、話してもいいんですね？』
「うん」
『…分かりました。ただし、皆さん？ 一度聞いてからそれじゃあナシで、というのは…やめてくださいよ…？』
と、いうことでこれまでの経緯を語ったイントだったのだが…。
「…え、それだけ？」
と真記にはやや呆れ顔されてしまう始末。
「んっとね、かしこ…大体しってることばかりだよ？ ネコさん？」
「だよね？ みきがなんかどっか別の世界行って…なんかあって…それで困ってる、と。前に別のネコに聞いたのとほぼ同じじゃん」
「少し違うけど、まあ…ガーフが予想していた通りだったかな、うん」
「あのカッコいいネコさん？ ガーフって？」
「そう」
『…あのー…』
『…なんか、自分、いらない子でしたか…？』
両耳を、ぱたり、と倒してしまってやはり未来の方を見る。…肩透かしくらったとかそんなものではなく。どうも期待していたような驚きと歓声が全然なかったのがホントウに意外だった、とかそんなところだったらしい。
「そんなことはない、と思うのだけど」
少しかわいそうになってきた未来ではある。
「結局みんなに助けてもらわないと…わたし一人じゃ、何もできそうもないし…」
『…そう！ それ、です。はい。皆さんミライさんを助けてあげて欲しいのです。そう、自分はそれが言いたかったのです…！』
…ってさっきも言ってたじゃん…。
と、皆は思ってしまったのだが、なんかこちらも哀れに思えてきたので黙っていることにする。
「でもどうしたらいいのかな？ こういうとき小説とかだと…なんか、とってもいいアイデアが意外なところからでてきたりするのだけど」
「お、さすが文芸部」
かしこは文芸部なのである。そして映研なのが…
「映画でもマンガでもさ、そういう流れってあるよねー…そうか、ここはやっぱりヒーローがなんとかしなくっちゃね。ということで、はい、転校生！」
びし、と啓児を指す真記。僕？ と自分の鼻を指す啓児。
「なんかいいアイデア出して？」
「って言われても…」
未来の方を見る。未来も…どうしたらいいのかは分からないけど啓児の方を見る。
「そうだ。福田さん。あのナンタイコウのクリエイターって…君の母親なんだよね…？」
