「え？ うん。お母さん…」
「どゆこと？」
『…クリエイター、とは世界を創った発起人のことです。あの世界を創ったのはミライさんの母であるキョウコさんなのです…』
「え？ え？ それってすごいことなんじゃ…？ え？ ナニ？ みきのお母さんって実はすごいヒト？」
「わーーーー…いいなあ、うん、いいなあ、それ」
…いい…ものなんだろうか
正直、未来にはよく分からない。と言うよりこれと言った感想が起こらない、と言うか…ああ、そうなんだ、とかそれくらいしか思えない。だからかしこのようにここまで興奮して話すことも、真記のようにあたしもやってみたい、とかはしゃぐ意味もよく分からない。
それがなんとなく歯がゆいような、それすらもよく分からない、ような…？
「そのクリエイターである福田さんのお母さんに頼めばどうにかできるんじゃないかな？ クリエイターなら自分が創った世界に対してかなりの力が使えるはずだから」
「おー、なるほどさすが転校生」
うんうん、とうなずく真記だったのだが。
「…でもみきのお母さんって…行方不明なんでしょ？」
「…うん」
「そうだったよね…じゃあ無理なんじゃ…」
と、と音もせずに未来の太ももの上にイントが乗ってくる。
『…ちょっと待ってください。未来さんのお母さまは亡くなられたのでは…？』
「ううん。行方不明。…うん、そういうことになってる」
…そう、そういうことになってる…
『…そうでしたか。だから記載がそのままに…なるほど…』
「あ。ネコさんなんかカッコいい」
空間でぺらぺらと本だか帳簿だかをめくるような仕草。眷属の特徴？でもある。あの太っちょネイトがやるとなんだかぼってりしててダルそうだが、イントのそれはスピードが違いすぎる。文字通り目にも止まらない速さで前脚が左右に振れ続け…やがて一点で止まる。
『…ここです。この記載。クリエイターの名前はフクダキョウコ』
…どうも帳簿？をこちらに見せてくれているようなのだが…？
「どれ？」
「みえない」
「…えーーっと…？」
未来もじっと目を凝らしてみたのだけど…。
「イント。やっぱり…見えない」
『…あ、失敬しました。これは一応部外秘の極秘資料なもので。我々以外には見えないのでした』
じゃあなんで見せた、というのは誰しもが思うところだったりする。
『…クリエイターとは先ほども申し上げた通りです。その申請があった名称、つまりクリエイターの名前はフクダキョウコ。個人での申請で…後見人はアタネアケハル。ああ、この方はオオソギアケハルからアタネアケハルに名称を変更された方ですね…』
「あたね？」
「…あたねって…？」
『…通常はクリエイターに何かあったりして創った世界が管理できなくなると…後見人が後任を指名するもので、その旨が記載されます。しかしそれもない。ということは記載漏れがあったのかあえて変更を申請しなかったかあるいは後見人に何かあった、か…？』
だからこう言ってはなんですが…お母さまが亡くなられたことで後見人とも縁が途絶えてしまってそのままになってしまったのでは、と思っていたらしい。実際、記載されているクリエイターとその実情が異なる、もう存在していないクリエイターのままになっているケースは結構多い、とのこと。…もちろん、そういった世界が後々どうなってしまうのか、それは想像の通りだったりする。
「いや、でもねえ…あたねって、ねえ？ かしこ？」
「そうだよねえ？ ねえ？ まき？」
『…お二人は後見人のアタネアケハルをご存知なので？ ではそちらから切り込む、という方法も…』
「いや、直接は知らないけどね。多分…あの人の関係者だろうなあ、と。あんまし見ない名字だし」
ピンポーン
『みーくーん？ あのねー、なんかネコっぽい旅人が来てねー、えっとねー、とりあえず開けてー？』
