「…どうだったの？ みらい？」
戻ってみると。すでに先守と明夫が帰っているらしく奥から賑やかな声がする。しかし出迎えてくれたのはかしこ。
「うん。まあね…」
玄関にはクツがたくさん。…こんなに人がいるのって、前に勉強会した時くらい…かな？
「大変なことになってる。みーちゃんのとこ」
「…たいへんなのはこっちも、かもよ？」
「うーーん…そう言われてもなあ…どうだ？ 明夫？」
「オレはいいよ、別に。なんだか大変なんだろ？ 姉ちゃんの友達なんだろ？ みんな。あ、やっぱカレーにはソースだよな」
…え？ カレー？
なんだかいい匂いがするな、と思ってリビングに行ってみると
「おう。お帰り未来。とりあえず作っといたぞメシ。豚コマの簡易版カレーだけどな、みんなも食えるだろうしさ」
ということでみんなでカレーライス食っているのである。
そこまで広いリビングではないので（普段は四人ならかなり余裕があるくらい）真記・かしこ・啓児・先守・明夫そして未来が座るとまあまあいっぱいいっぱいといったところではある。
真ん中のテーブルにはカレーが鍋で置かれてあって、そこから各自が皿によそうようなシステム。そしてその大鍋のそばで興味深そうにカレーを覗き込んでいるのが…
『…おや、ミライさん。お帰りなさい…』
『…そちらはいかがでしたか？ アタネさんは…』
「まだちょっと分からないみたい。とりあえず先輩たちは家に戻ってもらったけど」
「ん？ どうかしたのか？ 美咲が？」
「ゲンゾーさんが倒れたんだって。さっきまで病院にいたの」
かちゃり、と音を立ててスプーンを置く先守。
「そうか…」
「今はみんな家に戻ってるって。入院してしばらく経過を…って？」
「悪い、未来。俺ちょっと行ってくるわ、美咲んとこ」
カレー、みんなで食ってくれよな、未来、父さんにうまく言っておいてくれ…明夫、食い過ぎんじゃねーぞ、と慌ただしく支度して飛び出して行ってしまった。
「お兄さん、やっぱり気になるんだね」
端っこの方でカレー食ってた啓児。
「うん。でもこっちはこっちで今やれることをやらなきゃ。…イント？」
『…はい？』
「みんなにはもう…話した？」
『…ええ。ただ方策がどうしても…なかなか具体的な方向に進まないのです…』
「そりゃあそうだよ姉ちゃん」
大きく口を開けて一気にカレーを飲み込んで…明夫。
「何をどうしたらいいのさ、そもそも世界が…って言われてもよく分かんねーし」
「それはあたしも同意だね。実際にあっち行ったりできるみきならともかく、さ」
この人は口にスプーンをちょいちょい運びながらカレー食べてしたりする。
『…ですからその辺はご説明した通りです。こことは別の世界があって、そこに不具合が生じており、その不具合によってはこちらの、今あなた方が住んでいる世界にも影響が出るかも知れない、と…』
「とは言ってもねえ…ねえ？ かしこ？」
「うん。ネコさんのいうこと、なんとなくはわかるんだけど…」
ぱん
思い切りてのひらを打ち付ける、未来。
「何でもいいから母さんと繋がりそうなモノ。それを探そう。何でもいいの。あの世界を創ったのはわたしの母さん。その母さんを探し出すには…」
『…縁（えにし）、ですか…」
「そう。明夫、なんか心当たりない？ あんまり覚えてないかも知れないけど…って…」
ぐるりと見回してみる。…なんでみんなこんなにこっち見てるんだか…？
「どうかしたの…？ みんな…？」
