「いやなんか…新鮮だな、って。こんなに積極的なみきを見るの、初めてだし」
「そう。なんか…スゴイね、みらい」
…え？ えー…
「なんか…そうなのかな…」
「うん。でもみんな意外な一面持ってるものなんだね。僕はそういう福田さん見れて、良かった」
…えーー…なんだろ、どうかしたのかな、わたし…ヘンかな…
「ただいま…って、どうしたのかな？ 何かあったのかい？」
そこへ羽佐人が帰ってきた。随分にぎやかだね、と、玄関に並ぶクツの多さにびっくりしながら。
「そうか…」
みんなでカレー食べてしまって、コーヒーを飲む羽佐人。
「うん。そういうことか。うん。…それでアケハルさんのところは…」
ああ、そうだった、と膝を軽く叩く。
「いや今はゲンゾーさんだったね。先守が行っているみたいだけど、未来、どんな感じだったのかい？」
「…サヨナラだ、って言われた」
「そうか…」
「あれ？ 阿多根先輩のおじいさんって意識なくなってるんじゃ…」
こそこそっと真記。
「恐らくですけど、旅人ならではの方法で福田さんと接触したと思われます」
やはりこそこそっと啓児。
「いしきないのに？」
「ええ」
「ほー…なんかスゴイな、旅人って」
……。
何事もないような様子でコーヒーすすっている羽佐人を見る。
…どうしてここまで落ち着いてるんだろ…やっぱり何か知っているのかな…。
「ゲンゾーさんは母さんの古くからの知り合いなんだ」
かちゃ、とカップを置く。
「明夫は覚えてないだろうけど、君が生まれた時に病院で君を迎えたのはあの人だよ。僕がちょっと出向けなかったからね」
「そりゃ覚えてねーな、オレ」
「それから母さんがいなくなってしまって…そして縁が遠くなってしまった。それがまたこうやって未来が縁を結んでくれた」
そして…軽く指を組んで自分の娘を見上げる。
「大丈夫。あの人のことだ。どうにかなってもどうにかしてくれる。母さんの時もそうだったんだから」
「母さんは旅人だったんでしょ？ そしてゲンゾーさんが先達で…」
「そう。詳しい出会いは僕も分からない。何せ僕と出会う前からの知り合いだからね」
「学生時代とかそういう頃から、ってことですか？」
「恐らくね。いやもっと前からかも知れないね。僕が初めて会ったのは遊園地があった頃。…もう君たちは知らないと思うけど、駅前のスーパー。あそこに小さな遊園地があったんだ。本当に小さな遊園地でね。小さなメリーゴーランドにミラーハウス。売店も一つしかない」
「信じられるかい？ 入場料は大人100円で子供10円。それも週末はほぼ無料開放していたんだ。どうやって収益を出していたのか、ちょっと分からない」
「かしこ、きいたことあります。たしか…地元のゆうし？のひとがお金だしていた、って」
「うん。実際にはそういうことだったんだと思う。今となっては…もう分からないけどね」
「そこで働いていたのがゲンゾーさんってわけっすか」
「働いていた、と言うか…何だろうね、仕切ってた、みたいなものだったね。当人は着ぐるみの中に入っていたりしてたけど、気が付くとあちこちで何か修繕していたり接客していたり。何せスタッフは機材の調整係のおじいさんの他にゲンゾーさんと母さんと何人かだけだったんだから」
「…てことは母さんと父さんって…」
「そうあの遊園地…知る人の間ではアタネパークって呼ばれてた。そこで知り合ったんだ」
