「ちょ、ま、転校生…」
「ななさくくんはもうてんこうせいじゃないよ」
「いやま、そりゃそーだけどさ」
すでに様式美？と化しているツッコミではある。そんな二人に向き合う啓児。
「僕はこの世界に元からいた存在じゃない。本当の名前はオーパス。バン・ハンドルという世界から渡ってきたんだ」
と、言われても。
「あー、なんか前にそんなこと言ってたっけ」
軽く頭をかきながら…真記。
「あれ、ホントのマジ話だったんだ？」
「まき…」
「いやだってさ、いきなりンな話聞いてさ、フツーならさ、なんか…ちょっとヤバい奴だ、とか思わない？」
「そりゃあ、まあ…」
「…なんのこと？」
「ほら、みきがさ、いきなりネコに連れ去られたこと、あったじゃん？ その後に転校生に説明は、してもらったんだけどねー…かしこと一緒に」
「そうだったんだ」
その時未来はガーフに無理やり渡る練習をさせれらていたので、その場にはいなかったのである。しかし
「うーーん…」
真記とかしこは二人して腕組んで頭かしげてしまう。
「なんかよく分かんなかったんだよねー…」
結局あの後上手く説明できなかったのである。
さらにこっちの二人…羽佐人と明夫にしてみれば、さらになんのことだかよく分からない状態ではある。娘や姉の友達がいきなり「僕は違う世界から来たんだ」とか言い出したわけである。そりゃあ…すぐにはよく分かるわけもなく…？
「…よ。タイショー、まだやってる？」
そこへ一面のレコードジャケットの中に黒い穴ぶち開けて、もっとややこしい？方が姿を現わしてくる。ご丁寧にのれんをかきわけるような小芝居までかましながら。
「くすしさん…！」
「おいっす。ちょっと近くまで寄ったもんでね。いいとこ見つくろってくんな…？」
そりゃ、いきなりそんな景色が展開されたら、フツーは…固まる。
「ご新規さんはやっぱり難しいねえ。よし。そんなお前らにいいもんくれてやろう。ほい、受け取んな」
ひょい、と投げ込まれるキジネコ。空中で一回転して…床に降り立つ。
「ま、頑張んな。じゃな！」
黒い穴は音もなく収縮していき…やがて何事もなかったようにくすしさんもろとも消えていった。
「未来…」
真っ先に動いた（動けた？）のは父・羽佐人。
「さっきの…あのヒトは…一体…？」
「えっとねー…なんて説明したらいいのかな…」
「いや、ねーちゃんすっげえな、あのヒト！ 壁！ 壁抜けてたぜ！ 手品？ イリュージョンってか！ すっげえな！」
一方こちらは『すっげえ』を繰り返し始める。放り込まれたガーフをひっ掴んで踊ったりしている。
「…未来…」
『あーもう、めんどくさい子供だね！ お放しよ！』
掴まれていた両前脚を、弾くように振り返して明夫の手から逃れる。
『ったくもう…挨拶なんか行くんじゃなかった。やっぱりなんかあると思ってたんだ、あの悪人どもめ！ なーにがあんたなら適任だよ！ そりゃ予測はしてたけどさ…私かい？ 私にやれってかい？ あんたらがやんなよ！ ったく！』
と、ぐるりと見回して…。
『あれ？ オーパスここにいたのかい？ それに…ミライ？ えっと…あー、そっちはあの時のご新規お二人さんかい？ ん？ てことは…』
ふう、とため息。そこへ、とん、と音もなく降りて向かい合う三毛猫。
『…おや。これはこれは…なかなかの旅人とお見受けしますが…？』
もう一回ため息。
『やっぱりやっかいごと、ってことだね？ やれやれ…』
