『とまあ、大体はこういうこと、なんだが…』
改めて説明してみた、ガーフ、なのだが。
「………」
「……」
「…えっと…？」
『まあ、分かってたさ、こういうもんだろうさ』
真記とかしこは、まあ、それなりに理解を示してはくれている（かしこはそもそもがほとんど信じてる派）明夫は「すっげえすっげえ」を繰り返しつつそこそこ信じてくれた方。しかし羽佐人はまだどうにもよく理解しきれていない様子。
「ええっと…？」
「おじさん。とりあえずしゃべるネコさんがいるのはもんだいない、ですよね？」
「それは…うん。そうだね。実際に目の前にいるわけだし」
実際に目の前の二匹もいる。
「しかしね…どうなんだろう？ こことは違う世界、と言われても…ねえ…」
「だから…父さん。世界はここだけじゃなくて他にも色々あるの。で、その中には七咲くんたちが元々いた世界もあって、母さんが創った世界もあるの」
「う…うん、うん」
「で、わたしとガーフ…この猫さんは世界を渡ることができる旅人なの」
「…うん？」
「世界は他にも他にもいっぱいたくさんあって、それこそ数えきれないくらいあって…」
「…ちょ、ちょっと待ってくれ未来」
『いや。もういいんじゃないだろうかね、ミライ』
軽く前脚で抑える仕草をする、二本足で立つガーフ。
『この手の話はね、納得できる存在とどうしても納得できない存在、てのがどうしても出てくるもんなんさ。もちろんきちんと説明すれば納得してもらえることもあるんだけど…』
…ちらっとイントを見る。
『あまり余裕がないようだね。そうですね、眷属さん？』
『…心配り、感謝しますガーフさん』
『と、いうことだ。とっとと準備するよ。いいかい？ オーパ…いや啓児？』
「もちろん。何をすればいいのかな？ 僕は？」
『差し当ってはミライが渡る時に一緒に渡っていく、ってことを考えな。シンクロそのものはそんなに難しい話じゃないことは分かるね？ あんたはそこから先までやってもらいたい』
「先…かい？」
『ああ。結構難しい作戦ってことだよ。ただ渡るってだけじゃない。世界を救うんだろ…？』
『…話が早い方は助かりますね』
とん、と音がするような気がして…未来の肩に乗ってくるイント。
「そう…なの？」
『…はい。実は結構ヤバい状況なのですよ…ホントウに…』
『ということだ、ミライ。まずはこっちに来てもらうよ』
何がということなのかは、ちょっと分からないが…なぜか未来の部屋に押し込まれるみんな。
「ねーちゃんの部屋ってなんか久しぶりだな。やっぱキレイにしてんのな」
「あんまあっちこっち触んないでよ」
そして未来の机の上をうろうろと何かを探し回るガーフ。
『えっとね…こっちの文字はなかなかむつかしいんだよね…なんだい、母音と子音がセットになってるって…ああ、ミライ、アレはどこだい？ アレ』
「アレ？」
『アレはアレだよ、アレ。あーー、ほら、あん時に使ってたって、アレ』
「…アレ？」
「もしかして申請書のことかい？ ガーフ？」
『そう、それ！ さすがオーパスだよ。渡るのに必要なんだろ？ どこだい？ どこに置いてあるんだい？』
…どこもなにも
「ほら。これでしょ？」
未来がここのところはいつも見えていて、時々眺めている申請書を、そっと差し出すのだった。
