『よし。じゃあ…そういうことで』
ちょいちょい、と未来と啓児を手招き。
『よしよし。こうしよう。うん、いいね』
…え
『どうだい？ この方法ならうまくいくんじゃないかねえ？』
…え
思わず羽佐人を見上げてしまう。…どういう表情をしたらいいのか、正直なところ困っている羽佐人。
「…父さん…」
「うん、えっと…未来…？」
『ここに寝ないと渡れない、そういう条件渡過なんだろ？ 繋がり求めるならキョウコの定めたその辺の要素も加えた方がいいだろうねえ？』
「…みき、あんた…」
「大胆」
「…言わないで」
未来のベッドに啓児と二人、寝っ転がることになってしまっているのだった。
…七咲くんは…
そっと横を向いてみる。啓児は両手を腹の上に軽く組んでじっと天井を見据えたまま。その表情を読むことはできない。
『ただし今回はナンタイコウへ渡ろうってんじゃない。キョウコのいるその場所へ渡るんだ』
「その場所？」
『どっかにいるんだろ？ その存在が完全に消滅してないってんなら…どっかの世界のどっかにいるはずだね』
「…結構アバウトな猫だな」
真記の突っ込み程度に動じるようなガーフではない。
『後は回数こなすだけだね。何度かやってりゃそのうち辿り着く。まあ、大抵はそういうもんだろ？』
…結局そーなるのかー…
「イントは分からないの？ その場所？」
『…分かっていたら最初から教えてますよ。眷属にだって分からないことくらいあります。…と言うか分からないことの方が多い。この帳簿にだって』
軽く右前脚を…上に持ち上げるような仕草。前脚の下に何か…恐らくはあの見えない帳簿が重なっているのだろう。
『全部載ってるわけじゃないです。せいぜい一割に満たない程度。この複雑怪奇な無限世界回廊の全容なんて、キュリオスにしか分からないでしょう…』
「そうだ。それです」
むくり、と起き上がる啓児。
「キュリオスって…何なのですか？ 一体？」
『…キュリオスはキュリオスです。それ以上でもそれ以下でもありません…』
「かみさま…ってことですか？ ぜんちぜんのう…なんですか？」
さすがにかしこは食いつき？がいい。
『…全知全能…？ ふ。笑わせないでください。そんなファンタジーな存在、あるわけないじゃないですか。もっと現実を見てください…』
「…がーん…」
「…あんたがソレ言うか…」
「キュリオスはそこに在る。ただそれだけ。…だったっけ」
『…そうです。さすがミライさん。そんなもんなんです…』
「在るだけ。それがキュリオスなんですか？」
『…そうです…』
「じゃあ、キュリオスって、一体なんのために在るのですか？ なぜ存在しているのですか？」
その真っ直ぐな目を、やはりしっかりと見返すイント。
『…では逆に問います。あなたはなぜ存在しているのですか？ なぜここに在るのですか？』
「それは…それは、戦うため」
『…実際に戦闘しているのはバン・ハンドルにいる時のあなたです。では今のあなたは…なぜ？ 戦うためですか？』
「僕は…」
隣の未来も半身を起こしている。だから、自然と視線が合う。
「僕は、福田さんを守るために戦う。ここでは、そのために存在している」
