「012からか」
ポイントにはそれぞれ認識番号が割り振られてある。
『012 033 041 189 238 776 782 801 992 993』
これらがその10のポイントである。残り47は後で調べるとして…まずはここから、ということである。なお、これらはただの認識番号…管理しやすくするための番号…なので正式名称、いや、正式な番号は他にあったりする。数十ケタ…いやいや、数百から数千ケタにも及ぶ数字の行列がそれである。覚えよう、などと思わない方が賢明なくらいの数字なのだ。
「…潜入…」
と、カッコつけて言ってみるが実際は大したことではない。そのサイトにアクセス、つまり入っただけのことである。
個々のポイントを管理しているのは惑星上の各地域・各国の通信関連の省庁になる。しかしその省庁のコンピュータなりデータバンクなりに入ってみてもその手の情報は得られない。全てのポイントを統括している国際的組織があって、そのシステムへ入る必要がある。
…入ること自体は問題ないのである。どこのどんな、昨日生まれて初めてコンピュータに触れました…てなシロウトでも入ることができる。フツーに自分のコンピュータ立ち上げてネットワークに接続して、組織（こう記すと陰謀とかなんとか出てきそうだ…）のサイトへアクセスすればいい。それだけ。ポイント関係はそのサイトでもタブーになっているわけではない。専用のページが用意してあって、認識番号と正式な番号がずらりと並んでいる。
つまりページ丸々数字の羅列になっているのである。ジルバが調べようとしているのは10のポイントだが、実際に存在しているのは100なんか軽く超えた数存在している。それら全部の情報が載っているサイトなのである。
こんなサイト、一般人にとって面白いわけがない。数字、数字、数字…一部には数字フェチ、というのも存在しているらしいが、そうでもない普通の人間にはこれらを眺めることは苦痛以外何物でもない。無論、職業として必要としているのなら話は別だが。
ジルバもそういうとこは普通？の人間である。
そしてそのページを見ることが目的ではない。アクセスポイントの通過記録を調べるためにこのサイトにアクセスしたのだ。
「…作動」
またまたカッコつけてるが例のデバイスを立ち上げただけのことである。組織（やはりなんか怪しげだ…）ではメンテやその他で通過記録を定期的にチェックする必要がある。大元の記録は各地域や各国のサーバに保存されている。さすがにそこまで「潜入」するにはジルバやサルサでは難しい。プロの犯罪者？の出番だったりする。…しかし実際にメンテなどを行なう時にはこの記録、つまりログを一時コピーしてネットワーク上に上げる、ということが行なわれる。サーバに正式にアクセスできるのはかなりの権限を持った連中だけ。何かあった時に、いちいちそういったおエライさんにお伺い立てるくらいなら最初にある程度コピーとっとこう、という現場の判断なのである。
もちろんこういう行為は背信行為となる。バレればそれなりの罰を喰らうだろう。
しかしこれもある程度黙認されているフシがある。作業が終わればコピーしたログはネットワーク上から完璧に削除される。それに、このログ普通の人が見ても何がなんだかさっぱり分からないようになっている。…日時と数字しか並んでいないのだ。そしてその数字、というのは大まかに言えば「どこから」「どこへ」向かったか、ということで…前述の膨大な量の数字の洪水が何件も何件も起きているような状況になっているのである。
ジルバが探しているのはそのコピーされたログである。メンテそのものは規模にもよるがかなり頻繁に行なわれている。何らかのトラブルが頻発した時には連日やったりする。ここんとこはそういう話は聞いていない。しかし…おおやけにしないメンテや調査というのも結構行なわれているものなのだ。
デバイスの能力はよく似たファイルを探しだすこと。
ネットワーク上に上がっている、と言ってもそれはこの組織（…ウラがありそうな…？）のサイトのどこかになる。サイトとして表示する以外にも様々なファイルが同じ階層内には存在している。その中に上げてあるのである。…ただしどこにあるかは分からないし、大抵はカギ付きのロックされたファイル。見つけることができたとしても手間はかかる。しかも100%欲しいログかどうかも分からない。職員のプライベートな同僚悪口全集とか恥ずかしい詩集とかそんなどうでもいいのがとんでもない容量で転がっていたこともあったりする。
「うーん…」
デバイスが探している間は…せいぜい数十秒だが…待たないといけない。
「何をしているんですか？」
いきなり背後からアンヘラの声。
「え、いや、その…」
…サルサは何やってたんだ？
ヘッドセットに指を当てて（意味はないけど）小声で呼んでみると…返答がない。
「あ。サルサさんならうちのこんぴゅーたーに来てますよ？ こんなことまでできるんですね」
ただのデータ集合体、と考えるならよそのコンピュータへ移動（この場合コピーしてから元の方のデータを消去か）することも可能ではある。
『あは。こんなゲームもあるんですね…うわ、なんかすごい』
どうもあっちの様子を見に行ったらそのまま居ついてしまった、とかそんなとこらしい。あんまりよそへ行かない一種の箱入り娘だから色々珍しかった、のかも知れないが…。
…たしかにそういうゲームとかないもんな、僕のとこ。
妙なところに落とし穴？があったもんではある。ここにあるのは仕事用コンピュータのみだからそんなお遊びは一切搭載していないのである（ジルバの個人用コンピュータにもそういうのは入ってなかったりするのだが）。
