マズルカ・マズルカ The "4th" Day page 16

「お姐さま…？」
「そんな顔しない。めんどい。いい。もう…全部」
　ひらひら、と軽く手を振る。もういいや、ということでもある。あきらめた、と言うよりもムダだ、と気づいたのだろう。
　船内カメラに何も映っていない、それっぽい証拠もない。これ以上詮索しても何も出てきそうもない。
『マズルカ、お前…』
「あんたまでそんな声出さない。いい。割り切るから」
　だったら今あるカードで勝負するだけ。切り札めいたカードは手に入ったのだから。

「とりあえずさ、パスワードっぽいのは手に入ったんでしょ？」
『恐らく、だがな』
　少し、黙る。
『生成過程が不透明、というのはやや腑に落ちんが、まあ、結果オーライと言うことか』
「せーせいかていって何よ？」
『これまでパスワードなりヒントなりを得た時のことを思い出してみろ。我々に何らかの仕事を課していたではないか。課題と言ってもいい。何かをやらせておいてその報酬として何らかを与える、とこれが今までのパターンだったわけだ』
「ま、たしかにね。…ヘンなのばっかだったけど」
『それが今回に限っては、ない』
「でも結果オーライってか」
『そんなところだ。やや不本意だがな』
　まあ、でもお前が割り切ると言うのならそれでもいいか…と付け加える。

「それに…」
　エイブラも、少し黙ってみる…。
「この文字列、なんか、その…仮と言うかランダムっぽいような気がしません？　これまでのだと何か意味があったりするものでしたのに」
「なんかわけわかんないのもあったじゃない」
「それはそうですけど。…なんか今回のは…」
『雑、だな』
「ええ。雑ですわ。なんとなく」

「ワンタイムパスワードかも知れませんわね。それならさっさと放り込んでしまいましょう」
　言いながらサブモニタへとファイルを移動。カギ付きのアレである。
「…わんたいむなんちゃらって、何よ？」
『その場限りのパスワードということだ。大抵は時間が経つと自動的に変更されて無効になってしまう。だから急ぐ必要がある。サイトによっては必須だったりするからな、こういうのは』
　作業そのものはそんなに難しくない。こういうファイルは開こうとすると『パスワードは？』と尋ねてくるのが普通だからその時に間違えずに入力してやればいい。これくらいならマズルカだってできるようなもんである。
　実際、即座に開いたようである。軽快な電子音が鳴る。
『…どうだ？　開いたか？』
「開くには開きましたけど。…はあ」
「何々？　やっぱまたカギ付き？」
「ええ。でも…」

　モニタ上にはファイルが三つ。もちろん全部カギ付きである。

「…ひんと、は…？」
「これですわ、たぶん…」
　テキストファイルが一つくっ付いている。非常に軽量のものである。
「なんて…かいてあんの…？」
「えっとお…」

『UFAFAAA』

「またかよおおお！！！　なんじゃそりゃあああ！！」