The "5th" Day
「もーやだー…」
『否定は…せん…』
「あうう…何なんですかあ…これ…」
当然の感想ではある。ループみたいなもんなんだろうか？
やる気とかモチベーションとかがんばるぞー的な空気が一気に減退してしまった一同だが。
なんもやりたくねえ、と仰向けのまま漂い始めるマズルカ。ポルカは相変わらずだが…エイブラはコンソールに突っ伏すような姿勢。何気に無重量ではちとテクニックもいる作業？だったりする。そのまま浮かんでいる方が楽なのにわざわざモニタ前にしがみついていないといけないのだから。
つ、と天井をつついて身体を半回転…。
「まあ…ね？ こうしててもしゃーないし」
『うむ。非生産的ではあるな』
「そーですわねー…」
エイブラものろのろと顔を上げる。ということで一応？の立ち直りを見せる。
この『UFAFAAA』なる文字の羅列（うふぁふぁあああ？）がヒントなのは間違いないのだ。とすると、まず試してみることが一つ。
「カギ付きは三つありますからとりあえず放り込んでみましょう」
これがまたパスワードなんではないか、ということである。
「何も起きないに一票」
『奇遇だな私もそれに一票だ』
「もう…お二方ってば。全員同じだと賭けにならないじゃありませんの」
「…信じてないんかい」
「そりゃあ、もう。ここまでスカが続くと、ですわねえ…」
『そうか。では…私はちょっと変えてみようか』
コンソールの上を指が滑っていたのだが（ファイルが三つあることは分かるのだが、なぜか複数のフォルダの中に入り込んでいる）…その手が止まる。
「あら？」
語尾の「ら」ではなくアタマの「あ」にアクセントが置いてあって下がっていく発音。疑問、と言うより意外、といったところだろうか。
『何か、何かくらいは起きるのではないか、とな。だったら賭けも成立するだろう？』
「…何かって何よ」
『何かは何かだ。いきなり正解、とかそういうのはないだろうが…何か、くらいはありそうではないか？』
ぽけん、と口開けてみたりする。
「や、やーですわねポルカ様。なんか、なんかって…なんか、なんかかあ…うーむ…」
再び動き始めていた手を止める。目の前のモニタには三つのカギ付きファイル。見慣れたグラフィックの書庫ファイルである。
「どしたのよ？」
「…なんか…なんかくらいは起きるかなあ、とか…」
「何珍しく弱気になってんのよ。あたしはなーんも起きないに一票！ それでおっけ！」
『うむ。ならば私は何かくらいは起きるに一票』
「そうですわねえ…じゃあ…私は…」
「どうすんの？ ちなみに外れたら当たった奴に一つ貸しだかんね。これはでかいわよお…この業界、恩の貸し借りで動いてるようなもんなんだから」
どんな業界だ。
「…うかつにお姐さまに負けるわけにいきませんわねえ…」
たしかに。どんな無理難題を押し付けられるか分かったもんではない。
「何か言った？ んふふ」
「いえ。なーんにも」
…でもポルカ様に貸し、というのはちょっと面白いかも知れませんわね…。
「ンン。では…私も何も起きないに一票、ですわ」
『ほう。冒険を避けたな』
「つっまんねー」
「何とでも。さあ、入れてみますわよ…」
エイブラが操作したその瞬間。
…メインモニタいっぱいに広がる閃光、そしてどこか作り物めいた爆発音がキャビンに響き渡ったのだった。
