「…何だってえのよ、誤報？」
「みたいですわね。…ポルカ様？ ポルカ様、何か…分かりま…？」
『…うむ、ううむ…うむ。ああ、うむ…』
点滅が弱々しくなっているような…？
「…お姐さま？」
「…わかんない。こんなの初めて…」
…だったっけ？
「…いや、えっと…ポルカ？ こらポルカ？ おーい、起きてる？」
「お姐さま…」
「おら起きろー？ なに寝てんのよー？
『……うむ…うむ？』
腕輪握りしめてぶんぶん振り回したって意味はなさそうなのではあるが。
「まったく…」
「あ、やっぱこれじゃダメ？」
「ダメも何も。物理的にどうこうしても仕方ないんじゃありませんの？」
エイブラもその辺のことは分かってるようで、はー、と大げさにため息ついて見せたりして。
「貸してくださいまし。外部接続できるかどうか…できるようなら、ちょっと中を覗いてみますわ。ただ、セキュリティは厳しそうですから…まあ、通り一辺倒くらいのチェックしかできそうもないでしょうけど…何もしないよりはマシ、というものかと」
素直？に手渡された腕輪をひっくり返したり指先でつついてみたり。通常なら見ることもないようなほど細かいところまで覗き込んだりしている…エイブラ。…と、そこへ通信を知らせるランプと電子音。
「ほい？」
『ちょ、マジー？ そっちは大丈夫？』
『何やったのよあんたら！ ねえ！ こっちは大変だったんだからね！』
二分割された左右モニタ両方からコレである。
「なんかあった？」
『『なんかどこじゃなーい』』
「あー…あんたらんとこも？ ってこと？」
『いきなり警報鳴りまくりよ？ まったく大変だったらありゃしない』
その後ろではミヒャエルが何やらどたばたしているのが見える。…あ、アリがゆっくり泳いでいく…叩き起こされたのだろう。哀れなことである。
「で、あんたは何やってるの？」
『き、決まってるでしょ？ カントクよ、カントク。まーったくこいつら見てないとすーぐサボるんだから…』
…いや、その前にあんたも動けよ。
とは皆が思うところだろう。今現在でもミヒャエルが工具箱抱えたまま何度も何度も後ろを横切っているのが見える。アリもゆっくりと横切る。でも…言っても聞かないだろうなあ、この毒吐き女は。
「そっちはどうなったの？」
『うちは…まあ、なんとかなったわよ、一応』
『警報だけだったからな、まあ…なんとかはなるわな』
こちらの背後には丸まったルークの巨体。あっちほどには忙しくないようだ。
『最新の機体だったらもっと大変だったんじゃないのか？ ある程度こなれている方がこういう誤報にも対応しやすいからな』
『そうねえ。警報解除するにも多重チェックとか必要になるしね。時々あるじゃない？ こういうの？』
『でもここまで激しいのはなかなかないかな』
『まあ、そんなもんねえ…』
実際、この二人が乗ってるホープフル11号は最新とは言い難い程度の機体だったりする。対してあちらのワイヤ・テラー207号は基本レンタルだからそれなりに設備も新しい。新しいものの方が常に「良い」とされる業界でもあるが…こういったケースもあるので年期の入った機体もなかなかに侮れないものである。
『で…そっちは？ 問題なし？』
「それがね…」
こっちの背中の後ろではエイブラが奮闘中である。
「あーーー…やっぱこっちでも無理ですの…あー…これでいくか…」
『どしたの？』
「ポルカが沈黙しちゃったの。で、色々やってもらってるんだけど…』
