「現状では復活はムリってこと？」
『はい。現状では』
「うーーーーむーーーー…！」
腕を組んで天を仰いで一唸り。
しばし、耳の奥にかすかに残るような作動音…何かが回転しているような、そうでもないような、何かが動いているのだけれどそうでもないような…いつも聞こえているのだけれどいつもは気にもしていないかすかな、音。そういったものだけが狭いキャビンを支配する。
そんなあまり意味のない『沈黙』を破ったのはやはり船長。
「どうにかできない？」
『残念ながら』
「あんたでも？」
『はい。このわたしでも現状では無理です』
もう一度天を仰ぐ。それしかできない。
「そっかーーー…」
『…ボス…』
「…じゃあ、何かあたしにできることってある？」
『…それは…つまり…』
「あんたにはできなくてもあたしにはできる、ってこと」
『いくつかありますが…』
「言って言って？」
『一つはジルバ様に連絡を取ることです』
様、というのもなんだか気になるが…まあそんなことは今はどうでもいいか。
「そりゃ、やれってんならすぐにでも…」
と、言いかけてちょっと考える。
「え？ 別にあんたが連絡してもいいじゃん？」
『重みが違うのですよ、ボス。わたしでは通り一辺倒な、数値上のご報告しかできません。でもボスならもっと違った切り口からの報告が期待できるというものです』
「分かったような分からんような説明ねえ…でもまあ、いいわ」
現在のポイントからでは即応答、というのは無理なので動画メッセージを録画するか…と用意しようとして。
「いや待てよ…もうちっと状況整理してきちっと報告した方がいいか…」
ポルカの復活は最優先したい事項ではあるが、現状、生命維持に必要な最低限なシステムは復活しているのだ。それなら万全を期した方がいいかも知れない。焦ることはないんだ…と自分に言い聞かせる。
「エイブラの意見も聞きたいし」
『それもまたアリ、ですね』
どこかホッとした声のように聞こえたのは気のせいか…？
開きかけた連絡用の動画作成アプリをささっと閉じて、一息。
「で、他には？」
『蓄積データ領域や作業領域に関しては問題はなさそうなのですが』
「さっき言ってたね」
『それ以外、感情領域などの人格設定域となると…どうなっているのか、わたしにも分かりかねるのです』
「そりゃあ…ねえ」
サルーがそこまで分からんもんはマズルカにも分からない。
『そこら辺に突破口がありそうなのですが…』
「つまり…あれか」
「心」
「とかそんなもん？」
『そんなもん、の正確な意図を測りかねますが、おおむねそのようなところです』
結構いいかげん？なもんではある。
「んー…そんなもん、人間でも難しいんじゃないの？ 判別ってか判定ってか認定ってか」
『それはそうでしょうね。カタチのないものですから』
「まあね」
『かつてどこかの宗教関係者が言ったそうです』
「なんて？」
『心配だ、と言うのならその心配な心をここに出して見せよ、と。カタチのないものをあれこれ心配するのはばからしい、と』
「やっぱり分かったような分からんような…」
