「で、具体的にはどうすんの？」
『それを考えるのがボスの役目ですよ』
「あー…そう来るか」
…呼びかけたくらいじゃ無理っぽいしなあ…そもそも音声認識とかきちんと働いてんのかねえ…。
…あんまり保留したくはないしなあ…。
これだけ長い間ポルカと接していないのは実は彼女にとっては初めてだったりする。早いとこ戻ってきてくれないと色々困る。
しかし現状ではどうしようもない、というのが実情なのである。具体的な方策なんか早々出てくるものではないようではあるし。エイブラが起きてくるまではもう少し時間がかかるだろうし。そして。仮に、今すぐ「とりあえず」ということでジルバに連絡とってみても、即返答があるわけではない。それこそエイブラが起きてくるくらいのタイミングで返信が来る、とかそんなものだろう。
…それでも何もしないよりゃマシ、か…。
このままここでうだうだやってるくらいなら何かした方がいい。コンソールの動画作成アプリを再び起動する。
「やっぱとりあえずってことでジルバに連絡とってみるわ。何かできることがあるかも知れないし」
『分かりました。ボスに従いましょう』
「専門的な、細かいとこはそっちでまとめておいてくれる？ 判別できるところまででいいから…データとして一緒にまとめてあっちへ送るから」
撮影用のライブカメラを起動して…この辺かな、と自分の顔の位置を決める。なんだかんだ言って対人コミュニケート技術というのは重要なものなのである。
『りょーうかーい、し・まーした…ボスぅ！』
「うんうん」
ようやくいつもの様子が戻ってきたタイニィビートのキャビンではある。
「あらよっと、いーい感じだねえ〜っと！」
と、その頃（大体ほぼ同時刻）の惑星上。
つい先ほどタイニィビートからの動画メッセージ（今作成しているのではなく、先刻送信された方）を受け取ったばかりの…ビートエクスプレス社である。
「あーー…」
「あ、あははは…」
『………』
こっちの雰囲気は…異様、と言うより異状である。空気が…重い。
「…うーーん…なんだかどこかにヘンなバグでも入ったかなー…」
『……』
「ま、まあ、長い間飛んでたわけですし」
「…それフォローになってませんよ」
もちろん状況にもよるが、移動時間（ちょい解釈がビミョーだが）はデータの質にまず影響しない。その間に外部から何らかの「手」でも入れば話は別だが、そんな手間かけてまでこんな回りくどい？方向に改変したりしないだろう。
『…』
「でも動作不良とか起こしてないようだし…作業自体は可能のようだから…ね？」
『あ、は、ああ、わう、そ、そ、そー…ですね、はい。うん、そうです、きちんと動いてるだけ丸もうけってやつですね、うわははは』
「なんか開き直ってませんか？」
「そりゃ仕方ないよ」
ちら、とモニタを見る。すでに再生は終了しているのだが…
「あんなスタアの演劇画面みたいなの見せられたら…」
要はほぼ全編…と言ってもほんの数分程度だったのだが…「あの」調子だったのである。それでも肝心なところはきちっと伝えていたらしい。その辺はさすがにサルサの分身？ではある。なお、画面そのものはタイニィビートのキャビンの中の静止画像で、音声がサルーのもの、という構成。ちなみに急ぎ送ったのでマズルカは見ていない。チェックしていたら…さすがに止めていたかも知れない（あるいは面白がってそのまま送らせたかも知れないが）。
『あれが…あれが…わたし…』
あ、フラッシュバックしてる…。
「相当にショックだったんですね…」
「分からんでもないですが…」
そこへ、タイニィビートからメッセージ動画が再び届いたのである…。
『あー…ごほん。えー…マズルカです…』
