…なんか引っかかる言い方だなあ…。
「アレは皮肉屋っぽく作ったからね。『やってもいいですけどものすごーく痛いですよ？ それでもいいんですか？ いいんですよね？』とかこっちの嫌がりそうなことを言ってのらりくらり、かな？ 益がなさそうに感じたなら特にごまかして逃れるだろうね」
「じゃあ…セシルより前のミメ、ロボットからどうなんですか？ セーフティとかも全然ないんじゃ…？」
「それはもちろん。そもそも最も最初期の…それこそロボットの時代なら何の遠慮も何もなく殺してしまうだろうね。必要なセーフティ、というのは必要になってきたから発達してきたものなのだからね。…相当の件数のトラブルがあった、ということだよ」
「それにロボット、つまりはただのキカイからフォルスフォーマへ、そしてミメットへと至る過程に最も必要事項は魂だよ。タマシイ」
「魂…」
なんかどっかで聞いたことあるような、と考え込むアンヘラ。
「あ…」
と、ジルバを見る。小さくうなずいて見せるジルバ。
「あの、警察署の時に…？」
「そうです。ミメットには必ず認識番号が付いています。例えば…」
『リフターさんなら BRmm01-001-015 ですね。これは開発したバーレイ社を意味するBR・ミメット・男性タイプ、ということを示しています。そしてミメット業界全体で15番目に登録された、ということになるのですが…』
「問題は真ん中の001です。これが魂ナンバーです」
「001ってことは…002とかもあるってことですか？」
ゆっくりと首を横に振る。
「いいえ。今のミメットの魂ナンバーは全部001です。それ以外はありません」
「やや抒情的な言い方をすれば、だね」
ぱきん、と指を鳴らす。給仕ロボットがするするっとやってきて…お茶のお代わりを注いで回る。背中を丸めてちびちびと飲んでいたリフターにも、お代わりを注いでいく。
「それまでのロボットはただの道具に過ぎなかった。しかし魂を導入することでそれは生命体に変化した、と言ってもいいかも知れないねえ」
「その方が良かったのかどうか、というところになりますが、ね」
「ふむ。これは人為的な変革とは言え、ただの事象の一つだ、とも言える。そこに良し悪しの概念を持ち込むのはちと無粋だと思うがね？」
「その辺は同意しますが…結局最終的にはそんなところに落ち着いていくものなのですよ…ヒトの世なんてのは」
ずず、とお茶を軽く啜っていく。
「ちょっと話がズレましたが。この画像にあるのがFF02-000…セシルのものだとして。ここまで現存できるものなんでしょうか…？ もちろん航路上では惑星上や軌道上よりもモノの劣化スピードは各段に落ちる、ということは知っています」
タブレットを手渡す。もう一度、じっくりと確認していくカート・クレイマン。
「ただ、まあ…航路上設置物資なんて現代じゃ博物館クラスの遺物の中にあった、という時点でかなりの驚きではあるんですが」
「問題はないだろうね。物資と言ってもこれは明らかに水だったのだろう？ 保存状況が極めて良好ならばなおのこと今までにも存在は可能だろうね。…持ち帰れば各研究機関がこぞって求めてくるだろうね。今では…そうか、アーダがあそこに眠っているくらいなのだからね」
「アーダ？」
『Amf00-001-001-AADAですね。今はヨンソニア博物館で静態保存されてます。ミメット、という呼称を定着させたとされているアレイスターカンパニーの商業モデル第一号でもあります』
「さすがにもう現役でもない、ってことね？ 一体どれだけ昔のことなんだか…」
『最古の現役機種となると…登録上ではAmf01-001-007-BELLFAでしょうか。アレイスターカンパニーが分割・吸収・合併を繰り返して事実上消滅しても様々な要素が幸いしてまだまだ現役、という機種です』
「ああ…この間マズルカたちが会ったミメットだね」
『はい。ちなみに、なんですが。ベルファの方が後で発表されたのですが…実際に開発そのものが完了したのはベルファの方がわずかに早かったので01をナンバリングされ、アーダは02になる予定だったのが発表そのもは先になってしまったAmf00という今ではあり得ないナンバリングが力技で実行された、という当時ならではのエピソードもあります』
「ヨンソニアかね。いや懐かしい。あそこにはベリンダも安置されているらしいね」
「ベリンダ…ですか？」
「そうセシルの姉、とでも言うべきかね？ FF01-000、開発ベースのフォルスフォーマでね…」
…ん？
「あの、さっきから出てくるその数字なんですけど。なんで…000なんですか？ 二番目が」
そう言われて、ああ、そっか、という顔でお互いを見るジルバとカート・クレイマン。
「ご存知なかったんでしたっけ…FF01-000というのはフォルス・フォーマ・通しナンバーそして…魂ナンバーのことなんです。つまりこの認識番号を持つ連中の魂ナンバーは000ということになるんですよ」
