TheRootSeller 外伝 3 「ボクの薬協支部設立奮闘記」　[4-32]

「こういう知識も蓄えていくと結構面白いものだよ」
　と、アレンさんは笑っていたりする。

　それからその半分くらいになったゲマ街道を進んでいくことになった。やっぱりちょっとさびれている観、と言うか石畳も古い道なんでどこか古っぽいと言うか。
「でもカラドリアはゲマ街道を中心に栄えていったわけじゃないからね」
　え。ゲルンタージュは…そんな感じだよなあ…。
「もちろんゲマ街道上に作られた国、そして町へと変化していったわけだけれど」
「あら。今でもカラドリアは一つの国だ、って考えてる人はたくさんいますのよ」
　シャーマニーさんがどこか誇らしげに反論してみせる。ラン君もうなずいていたりする。そういう考えってのもカラドリアっぽくていい、とか思ってしまう。
「それは失礼。でも古代からあったゲマ街道はバズハイム王国…ゲルンタージュを含む、だね。それを発展させカラドリアやさらにオレイア国をも発展させていった。こういった都市ではゲマ街道が中心になっていったんだけど…カラドリアだけは別の道を造って、そこから更なる発展を目指したんだ」
「あ、それが中央通りっすか…」
「そう。造った理由はいくつかあるらしいけどこれ、というのはなくてね…ゲマ街道に対抗してもう一本別の都市間街道を造るつもりだった…とかそんな説もあるんだ。それでも今でも昔でもカラドリアの一等地であり一番の繁華街でもあるのに変わりはないね」
　先頭を歩いてたラン君が右へ曲がる。もちろんその後を歩いてたシャーマニーさんもアレンさんも…そしてボクも。…なんかやけに幅の広い道だな、と思ってたらまた違う道へぶつかって、正直、ボクは面食らってしまった。だって、ゲルンタージュを通ってるゲマ街道はもちろん、二番目に大きいカティ通りと合わせたって比べ物にもならない…。

「マルティン。ここがカラドリアの中央通りだぜ」
　ラン君が満面の笑みでそう言ったんだけど、目の前の光景が光景なもので、曖昧にうなずくしかできなかったんだ…。

　まず道幅。馬車が四台並んで通ることができる…つまりは二台すれ違うことができるって話でそれはたしかに事実なんだけど、まさかここまで広いとは思わなかった。しかも道の真ん中には石で台が築いてあって、違う方向の道路へ馬車が入れないようになってる。石、とは言ったけど土も盛ってあって背の低い木が植わってていかにも涼しげだ。
「あれは分離帯というんだ。イルトンランドではここくらいにしかないだろうね」
　そして敷石も滑らかに詰められていて、馬車の通る音も違う。普段よりも軽いと言うか軽快、と言うか…カラコロカラコロ軽やかに馬車も通っている。しかもひっきりなしに。話に聞くセントレランドの問屋分岐点・ビルマコッチャもこんな感じなんじゃないか、と思わせてしまう。いや、多分カラドリアの方がずっと洗練されてるんじゃないのかな…というのはやっぱりひいき目なのかも知れないんだけども。
　当然だけどゲルンタージュにこんな大きな通りはない。一番大きいのがゲマ街道なんだし…次に大きいのがカティ通り。これはうちの宿屋も面しているんだけど、こんなに大きくはない。馬車だってそれぞれ方向へは一台ずつしか走れないしね。いや、そもそもゲルンタージュだとこんなに馬車は走ってない。ムカスの引く荷車はあるけど、それだってひっきりなしってわけじゃない。

「……」
　って、その時はこんな風に色々考えることができたわけじゃなかったんだけど。
「どうよ。大きいだろ？」
「あ、ああ…なんか…」
「なんか、なんだよ？」
「スゴイね」
「そうだろ、そうだろ？　カラドリアってのはスゴイだろ？」
　なんかバカっぽいけどこんなやり取りしかできなかったんだ。

　シャーマニーさんが気を使ってくれて「ちょっと休みましょうか」と言ってくれた。そう、カラドリアの中央通りにはたくさんの店が並んでいる。ゲルンタージュのゲマ街道やカティ通りみたいにいくつか店があって、それから家が並んでまたいくつか店がちょろちょろっとあって…とかそんなんじゃないんだ。
　とてもオシャレで店構えなんかも繊細って言うか。ドアに触れるのにも気が引けてしまうくらいキレイなお店がいくつも並んでいる。ボクはこれだけのお店がきちっと並んで…なんか変かな、えーと、連続して？　いやいや、そう言うんじゃなくて…勢ぞろいしているのを見たことは、ない。
　…やっぱり何か変かな？　でもどう言ったらうまく説明できるのか…それもボクはよく分からない。うまく説明できないんだ。