TheRootSeller 外伝 4 「そんな彼らに花束を」　[2-2]

　んえ、何？　ポコポコ？　おなかすいたの？　コチューゴケならまだまだあるからさ、これ、食べててよ。

　ところでさ。あれから大変だったんだよー？　上がったり下がったりして。特にモナークが。
　ちょっち眠ってから起きたんだけど、やっぱすいみんってのは必要だよね。うん。体のキレと言うか動きと言うか…とにかくそんなんが全然違うんだもんね。僕、びっくりしちゃったよ。エギアにいた時はさ、一応きそくただしい生活ってやつですか？　そんなのをさ、父さんと母さんが言ってくるもんだから決まった時間に寝て、決まった時間に起きてたんだ。
　でもここは迷宮だからね。眠れる時に寝ておかないといけないってモナークも言ってた。
　だから僕も寝たんだけど…うーん…気分そうかいってやつですなあ…。
「…お前は相変わらず気楽でいいな」
「そっかな？　うふふふ」
「ほめてねえよ」
　あり？　そうなの？

　まずは縄をつたって3階層目までのぼったんだ。こういうのは僕好きだし得意だからね、ちょちょいっと。も少し長い方が楽しいかなあ、って思ったんだけど、モナークはかなりしんどそうに上ってたんだ。時々ずるずるって落ちたりするし。仕方ないから最後の方なんか僕が上から引っ張りあげたんだよ？　荷物も全部僕が持って上がったってのに、モナークってば、しばらくひーはーって息が荒くてつっぷしちゃってね出かけらんなかったんだ。つまんなかったよ。
　でもここって僕らが落っこちたとこでしょ？　元へ戻ってきたってわけだね。ここから見下ろすと…コチューゴケとほっちふわゴケが光ってるのが見える。真っ暗な中に、ぽつんぽつん、ぽつんぽつんぽつん…、って小さな光の粒々が集まっててさ。それが大きくなっててさ。キレイ、なんてだけじゃもったいないね、あれは。
　それからまた少し進んで…もちろん杖であちこちコンコン、てのは欠かしちゃだめだし。ポコポコが時々コチューゴケ食べたそうにしてるから取ってあげたり（さっきより食べなくなった…？）したけどね。そのうちたどり着いたのが階段。3階層目から4階層目への階段、ってのはさ僕もモナークも使ってないじゃん？　だから初かいだーん、ってわけだったんだけど、はしゃぐとモナークに怒られるからね、そおっと
「うっしゃー」
　とつぶやいてみたんだ。
　そう言えばなんか記号みたいのをモナークが言ってたけど…しーのなんとか何番とか。僕、そういうの覚えるの苦手なんだよねえ…ま、特に知らなくても問題ないみたいだし、別にいいよね？

　4階層目。見た目は…3階層目と変わりはないね。ちょっち…匂いが違うような気はするんだけど…何だろ、いい匂い…なような気もするんだけどね、なんか違うような気もする。…うーん、先に進んだら分かるのかな。
　途中でアカリホが二匹出てきて…カウントしたんだけど一撃入れる前に逃げちった。こんなんばっかだー。
　5階層目まで少し急ぐぞ、ってモナークが言うんでね、とりあえず階段に向かうことになったんだ。あんまし見るところもないらしいし、まあいいっか、ってね。で、モナークが5階層目に行こうとしてた階段に着いたんだけど…？
「どしたの？　何度も後ろ見たりして？」
「いや、何でもない。行くぞ」
　何かあったのかな。よく分かんないけど。

　そして5階層目へ、と。
「ここではゆっくりできるぞ」
「…ゆっくり？　迷宮で？」
「ああ。本当は『夜』が来る前に5階層目まで来ておきたかったんだ。その方が楽だしな」
　ゆっくり…楽…？　なんか迷宮に似合わないコトバばっかりだね…？
　迷宮の中は相変わらずひんやりしてて静か。そうそう、ちょっち前にモナークが言ってた通り、5階層目に入ってからたしかに思うようになったんだ…壁の色が濃い、ってね。それでもいきなりど黄色とかそういう風になっちゃったわけじゃないけどさ。でもたしかに3階層目とか思い出してみても、こんなに濃くはなかったと思うんだ。それは間違いないと思うんだ…触った感じもなんかざらざら感？が強くなってるような気がするし。
「そうだ。お前…そいつ隠しておけよ？」
「ポコポコ？」
　そのポコポコは今、僕の頭の上できょろきょろしてる…と思う。見えるわけないもんね、どんな様子なんだか。
「なんで？」
「今はまだいい。だがこれから行く場所は人目が多いんだ。そこでそんなの見つかったら…」
「ポコポコ悪さしないじゃんか」
「する、しないじゃないんだ。お前だって余計なトラブル抱え込みたくないだろう？」
　…トラブル。
「隠す場所、作ってやる。だからその中でおとなしくしてもらってくれ」

　って、モナークがありあわせの縄といらない薬入れの筒でポコポコの巣を作ってくれた。僕が肩からたすきがけするとちょうどいいし…ポコポコも落ち着いてるから気に入ったのかな？
　ところで…とらぶるって何だろ。なんかあんまり良くないことみたいだね、モナークの表情からすると。