TheRootSeller 外伝 4 「そんな彼らに花束を」　[2-7]

　マイノスおうこく、クレータ…ぶんぶんぶんっしょ、めいきゅうけいびた…？
「何？　一体？」
「ふふん。なかなか度胸があるじゃない。このあたしを見ても驚かないなんて」
　おっきな女の人だなあ…。ああ、でもそういうことは気になっても口に出しちゃいけないんだ、って古物商のおばあちゃんが言ってたっけ。こっこっこーこじんのね、そうだ、個人のジジョウはそれぞれだから、ヘンに思っても口に出すのは失礼になることがあるってね。
「あたしのことはジーナって呼んで。警備隊員よ。け・い・び・た・い。これなら分かるでしょ？」
　このかすかな匂いは女の人の匂いだね。少し腰をかがめるように、その腰に手を当てるような格好だから僕の背に合わせてくれてるのかな。

「あー…けいびたいって、あのけいびたい？」
「そう。多分あんたが思ってる通りの警備隊」
　何だっけ、けいびたいって。どっかで聞いたような気がするんだけど。
「あなたのお名前から聞いておこうかしら？」
「えっとね、マナメ。マナメ・カギョリ」
「あら。かわいいお名前。ルートセラーね？」
　おおっ！　初めて初めて会った人にルートセラーだって分かってもらっちゃった！
「うんうん、そうそう、ルートセラー！」
「変な歌にしなくていいから。…で、ここで何してたの？」

　あ…腰の棒。それに…この制服。けいびたいって…あの警備隊か…。モナークに散々言われてたあれだ。上の階層ではお世話になりそうになったしね。
　迷宮は本当は普通の人がほいほい入れるような場所じゃないんだって。そこであんまり人が入らないように守っているのが警備隊の仕事…で合ってるよね？　ただ、なんかモナークの言い方だとかなりイヤな存在みたいなんだけど、ちょっち前に父さんから聞いてた話だともっとホコリのある人たちで、なんかそんなイヤミな人たちじゃないような気がしてたんだけど。
　この人にはホコリなんかついていないよね。きれいにきちんと洗濯してあるし。あり？　ホコリってそのホコリじゃないのかな…？
「どうしたの？」
「ああ、えっとね…ここでポコ…」
「ポコ？」
　やばっ、ポコポコのこと秘密だったんだ！
「んじゃなくってね、えっと…えっとね…」
「なんだかその筒が怪しいわね。ちょっと見せなさい」
　！　僕…油断してたわけじゃないよ。そんなことないよ。でも…ポコポコの入ってる筒、すっと奪われちゃった…。

「返してよ！」
「ダメ。これが何なのか、ちゃんと調べないといけないの。本部でね」
　くっ…この人…！
「なんでさ！　返してってば！」
「あらあ？　なんでそんなにムキになっちゃうの？　何かイ・ケ・ナ・イものなの？」
「返せって！」
　…なんだろ？　この人…動きが…まるで…。
「中に何が入ってるのかなあ？」
　父さんの部下の人みたいだ…！　なんか…追いつかない？

「おい、どうした…」
「あら？　モナ…」
「モナーク！　カウント！」
「え？　お前、何を…？」
「いいから！　カウント！　けいびたいいん1、メソッドは…」
「おい…」

「僕がやる！　手を出すな！」

　うおおおおお…どりゃ、そりゃ、うりゃああ…！　せい、はあ、ふん！
　逃げるな、このこのこのこのこの、ほう！
　うっぐ…
　まだまだ…いくよ！
　せい、はあ、そりゃあ、これでもくらえい！

「はあっ！」