TheRootSeller 外伝 4 「そんな彼らに花束を」　[2-19]

　ふんだら、りゅあああああああああああ！　とあ、と、ああああああ！

　何言ってやがんのよ、このとうへんぼく！　何があたしの後ろって…変なこと言いやがったらこんだ、本気でぶっ飛ばすぞ、分かってんのかこら。
「うおい、ジーナ…」
「ああ？　何だこらあたしに何かついてるってか？　ああん？」
「じゃあなくってよ。…お前の相棒、ノビちまったぞ、さすがに」

　あらん。あたしとしたことが…バカバカ、あ・た・し・の・お・バ・カ・さん。

　こほん。

　ちょっと時間をもらったの。そう。だからハービーも大丈夫。頬とか鼻とか見なければ大丈夫。何も、も・ん・だ・い・なし、なのよおほほほほ。
「…あんたも大変だなあ、こんなのが相棒なんてよ…」
　なんで泣き出しちゃうのかしら？　ハービーったらん、もう…おちゃめなんだからん。

「あ。モナーク何してんの？」
「おう、話は終わったか？」
「うん。色々お話したよ？　楽しかったー」
　とととと、と戻ってきたのね、あのコが。椅子に深く座ってうなだれているハービーをちらっと見て…ほほほ、やあね。
「気にしなくていいのよ。彼、いつもこうだから」
「そお？」
「じゃあ…色々世話になったな。またどっかで会おうや」
　って、ちょっとちょっと。
「隊長からの依頼って一体何だったのよ？」

「ああ、それか。人を探してくれって…いやちょっと違うな。手がかりでもいい、って話だったな。どんな小さなことでもいいってな」
「誰なの？」
「スコット・オールドマン。例のアレだ。今度オールドマン家の当主になったティム・オールドマンの親父だ」
「あ、僕も聞いたよ、それ。えっとね、たしかね、今ゆくえふめいなんだよね」
「…スコット。スコット・オールドマン…」
　あら。復活早いのね。ハービーったら急に顔を上げて、ぐるりと見回して…。
「いや…まさか。まさか。あのスコットとは…違う…さすがに違う…」
　じゃあ別にいいじゃないの。ねえ。わざわざそんな意味ありげなことしなくても。何か知ってるってのならともかく。
「かなり前から行方知れずって人なんでしょ？」
「そうだ。だから何も見つからんかも知れねえ。それでも何もなくても迷宮を出る時にここに寄ったら金貨30枚だってよ。悪くはねえよな」
　二人してテーブルの上にカバン広げて、中身広げ始めちゃったの。装備の確認てとこかしらね。
　…ん？
「でも、あなたさっき言ってたわよね？　隊長からの依頼って、あの火吹き竜と関係あるって…？」
「ポコポコ？　ポコポコがどうしたの？」

　そしたらね、なんか意味ありげな笑みを浮かべるのよね…モナークったら。
「そりゃ、そうだろうよ」
「何がよ」
「まだ推測の域を出てないってこった。あの隊長は相当な切れもんだな。たしかに軍の人間だよ、ありゃ。警備隊とは目の付け所が違うってやつかね」
　…？
「俺らはこれからもっと下へ潜る。でもま、そのうち5階層目に戻ってくるから、その時にまた会おうや。ハービーもな、元気でな」
「じゃあ、ね、お姉さんと…ヘンなお兄さん」

　…ってことであの二人はここを去って行っちゃったんだけど…。
　そう言えばモナークに言ってなかったわね、アリサが迷宮に潜るってこと。まあ、今はまだいいかしら。今日明日って話じゃないんだし。それに…。

　隊長がどうしたってのかしら？　何かあるのかしら…？