TheRootSeller 外伝 4 「そんな彼らに花束を」　[2-36]

　うげあ、死ぬかと思った。アタマ…痛い。

　今、ポコポコはね、泉の水飲んでる。両手をついてぴちゃぴちゃってね。満足そうだよ。でも…さっきも水飲んでたよね。だーくぞーん出てからかな、なんかやけに水を欲しがるよね。なんでだろ…？
「お前、なんでこいつが水欲しがってるって分かったんだ？」
「だってさ、水筒の水、全部飲んじゃうんだもん」
　いきなりだったんだ、あれは。なんか腰の辺りにポコポコ行ってるなあ…とか思ったら水筒に巻きついてたんだ。ぐるぐるっとね。何だろ、って栓を開けると水筒の中に入っちゃうんじゃないかってくらい水を飲み始めて…。
「こっちの水筒もね、全部」
「…こっちの奴って、もしかしたら取り引き用の水か？」
「うん。もうめちゃくちゃ強引にね。…ね、モナーク、店ってさ、水筒売ってないかな…？　さすがにポコポコが口付けちゃったら取り引きに使えないよね…？」
　水の取り引きってそういうもんだよね？　3階層目の3の店のおじさんもそう言ってたし。

　モナークが言うには水筒も売ってるだろうって。でも…。
「ここで買うのはよっぽどのことがねえと勧められんな。バカ高えんだ。どうしても買いたいなら5の町か地上に一旦戻った方がいい」
「3の店は？」
「5の町ならいくつか店もある。場合によっちゃあそこより安く売ってる店があったりするんだ。…町の特権てやつだな。それに、ここからなら5の町の方がルート的にも都合がいい」
「じゃ、思い切って地上に…って、地上に戻ったらポコポコと別れなきゃなんないんでしょ…？」
「ああ」
　それじゃあ意味ないじゃん…。

「あ。それに…てことはまただーくぞーん…」
「そうだ」
　あそこはなんかイヤだなあ…あんまし何回も行きたくないなあ…。

　そしたらモナークが大きくため息をついて。
「仕方ねえな。俺は4本水筒持ってる、そのうち2本は取り引き用だ。…そのうち1本をお前にやるよ。お前は2本のうち1本をそいつにくれちまえ。そいつ専用にしちまえってことだ」
「いいの？」
「仕方ねえっつってんだろ。その代わり、お前の取り引き用水筒は俺が預かっておく。そいつも俺の荷物までは探ったりしねえみたいだしな」
「うわ…ありがと、モナーク！」
「礼なんかいい。…ったく、さっさと行くぞ。水、十分に汲んでおけよ。また水がねえ、とかそんなことになるなよ」
「うん！」
　こういうとこ、モナークって優しいよね。うん。

　それからはね、ポコポコも落ち着いたみたいで…時々なめるように水を飲むくらい。それでもいつもは、と言うか…これまではほとんど水なんか飲まなかったもんね。コチューゴケは食べてたけどさ。今は…あれ、コチューゴケ、あんまし食べてないや。
　なんかちょっと元気ないかな。…大丈夫だよね。
　僕の頭の上からそっと下ろしてみる。眠ってた…のかな。僕の方を見てるけどなんか眠そうだね。頭を軽く揺らしてるけど、それもなんだかふらふらしてる。そうだ、ここへ入っててよ。5の町の時に使った筒。眠いんならこの中で寝てた方がいいよね？
「ここが7の店だ。…そいつはしまっておけよ」
　おお。二つ目の店ってかあ…どんなのがあるんだろ…？

　………？

「おいじいさん、客だ、起きてくれ」
「…ふあ？」
「ふぁじゃねえよ。客だ。起きろって」
「ああ…そうか…もうメシか…」
「客だー！　起きろー！」
「今日は…何かのう？」
「じーさーん！」

　なんか状況がよく分かんないよね。
　えっとね、うんとね、僕たちが店のドアを開けた時にね。
　何て言うか…やっぱりゴザ敷いてあっていくつか商品並んでるんだけど。でもその真ん中にうつぶせになったおじいさんが…。