TheRootSeller 外伝 4 「そんな彼らに花束を」　[2-37]

「やっと起きたか。ったく、毎度毎度」
「おお、なんだモナークかい…いつ見ても若いなあ、おまえ…」
「あんたの方が年食ってんだから当たり前だろ」
　…やっぱ知り合いなのかな…？

　えっとね。7の店ってね、3の店とそんなに変わってないんだ。
　ゴザがあって、そこへ商品が並んでる。で、ゴザの真ん中には店の人…ここではおじいさんが座ってる。あ、いや…座ってると言うか置いてある、と言うか…。
「とにかく客だ。いいな？」
「おお…おお…」
「しばらくは起きてろよ？」
「ああ…うんうん、分かっとるよ…で…お前さんは誰じゃったかのう…？」
「モナークだ！　俺の親父の頃から馴染みだっただろ？　つか、さっきは俺の顔覚えてたじゃねえか！」
　なんか大変そう。

　商品は…キロの実かな、これ。ちょっと形が違うような気がするんだけど。それがいくつか転がってる。そして…あ、やっぱ水筒もあるんだね。でもあまりいいもんとは思えないね。何だろ、古びてるような気がする。ここで買おう、ってことにならなくて正解だったね、こりゃ。これで水を飲もうって…なかなか思えないよ。
　…いや、ちょっと待ってよ…？
　キロの実はともかくとしてさ、ゴザの上には他になんかの実と葉っぱが置いてあるんだ。多分商品なんだろうけど…葉っぱってさ、もっと緑色してるもんじゃない？　でもコレ…茶色い…枯れてるんじゃないの？　それともそういう葉なのかな…？
　実の方も…ヒビ、入ってるんだけど…大丈夫なのかな…？

「ね。モナーク、これ…」
「ああ？　ああ、それか。バイカの実とナンタイの葉だ。…どっちも地上でもめったにお目にかかれねえ逸品てやつでな、なんだ？　…ははあ、状態が気になるか。こんなんでも十分使えるんだ。問題ねえ」
「…そなの？」
「そうだ。それになんでかこのじいさん、こういう希少価値の高えもんばっか売ってんだ。…いくらだよ？　このバイカの実？」
「一つ金貨500枚ってとこだ。一枚もまからねえよ」
　…なんで値段言う時だけしっかりしてるんだー…。顔つきまで一瞬変わっちゃったよ、すぐにへにゃー、ってなっちゃったけど。
「いらねえよ。迷宮じゃ使わねえからよ」
「…おお…そうじゃのう…使わんなあ…」
　じゃあなんで売ってるんだろ。他の商品もガラクタっぽいし…ショーバイになるのかな、こんなんで。

「何か掘り出し物があるかと思って来てみたんだが…特にはなさそうだな。行くか？」
　あらら。おじいさん、こっくりこっくり居眠り始めちゃったよ。…じゃましちゃ悪いし、行った方がいいかな…。
「うん…そだね」

「おう。ちょっと待ちな、そこの坊主」

「…僕？」
「他に誰がいるってんだい、ちょっとこいつを見ていきねえな。こっちへ来ねえな」
　…えっと…。
　そしたらモナークが大きなため息つくんだ。
「寝ぼけてんだよ。昔はこんな感じでな、ぱりっとしたいなせなオヤジだったんだ。値段の話か、寝ぼけた時だけこうやって昔に戻るんだ」
「でもさ、坊主って…」
　僕、女なんだけど…。
「まあ、年寄りの道楽に付き合ってやりな。どうせすぐに眠っちまうんだから」

「よく来たな。こいつだ、こいつ。なかなか見れるもんじゃねえ。よく見ていきな」
　おじいさん…そうじゃないね、たしかにずいぶんと若く見えるよ。ただ…なーんか目の先がこっち見てないような、どこ見てるんだか分かんないのが…不気味。
「これ…キロの実じゃないの？」
「バカ言うない。こいつはつる性キロの実だ。しかも迷宮内で取れたってレアなしろもんだい」

　つる…キロ？　こんなんだったかなあ…普通のキロの実より、ちょっと細長いような、そんな感じなんだけど。
　僕が母さんの店で見たのはもっと小さくて丸っこかった。カラも柔らかくて…あ、その辺は一緒だね。でも色もこんな黄色っぽくなくって…そう、木の実と言うより草の実みたいだったんだ。