TheRootSeller 外伝 4 「そんな彼らに花束を」　[3-3]

「あ。モグラ塚なら知ってるよ。あのもこもこっと土が盛り上がってるとこでしょ？」
　ようやくこいつでも知ってることが出てきたな。
「そうだ。あれはモグラがかき分けた分の土を地上に盛ってるんだ。地表近くを進む場合は盛りながら進むこともあって、塚にしちゃ長細くなっちまうこともある」
　こういうとこからとっかかり作っていかんとな…ったくめんどくせえやつだ。

「地上のモグラはそれでいい。自分の体を潜り込ませるための土は地上に盛っちまえばいいんだからな」
「ふんふん」
「じゃあ、迷宮内のウロコモグラはどうすると思う？」
「えー…クイズ？」
「いや、そういうもんじゃねえ。お前ならどう思うか、ってことだな」
　一応考えてはいるようだな。腕を固く組んで額にしわ寄せて、うーん、とか唸ってやがる。ま、どこまで考えることができるか…その辺が問題っちゃ問題だな。
「…ヒント…」
　おいおい。
「クイズじゃねえんだが…ま、いいか。やっぱり迷宮内でもかき分けた分の土は出るんだ。だからそれをどこへ置くか、ということになる」
「むー…結構な量になりそうだね。結構大きかったし」
「ああ」
「…まさかと思うけどさ、迷宮の中に置いちゃうとか…」

　ほう。こいつにしちゃ上出来だな。

「一応正解だ。あれを見てみろ」
「あれ？　さっきうっきー…えっと、うろえろありだか、えっと…」
「…好きに呼べ」
「そお？　んじゃ、うっきーが出てきたとこだよね？　あれ…なんか…土？　こんなとこにあったっけ？」
「これがウロコモグラが盛った土だ。触ってみろ、こんな迷宮じゃあ、ちょっとお目にかかれないほど柔らかい土だ」

　そもそもウロコモグラはモグラにしちゃ大きい、ってことになってるらしい。何せ普通の地上にいるモグラはせいぜいネズミほどだからな。…そんな大きさだから土の中も自由に…そんなに簡単なもんじゃないらしいが…移動できるってもんだ。大きいとその分かき分ける土の量が多くなるからな。
　その辺は…学者の間でも意見が分かれているんだと。たしかに体が大きいとメリットもある。でも場合によっちゃデメリットの方がでかい。それなのになんでこんな体になっちまったんだろう、ってな…。
「ねえ、モナーク」
「なんだ」
「うっきーはさ、明るいところが苦手なんでしょ？」
「ああ」
「じゃあさ…なんでコチューゴケの中にわざわざ出てくんの？　土を持ってくるったって苦手なとこに出てくるなんて、ちょっとおかしくない？」

「ほう？　なかなか面白いとこ、突いてくるじゃねえか」
「へっへー、ほめられた？」
「ちげえよ。…でもな、そこら辺は実はまだまだ分かってねえんだ」
　土は…まだ湿ってるな。
「一説にはウロコモグラのような大型モグラはどこかに大量の土の捨て場を持っている、と言う。迷宮以外でな」
「つまり…ホントは迷宮には来ない生き物ってこと？」
「かも知れんってことだ。お前の言うようにわざわざ苦手な場所へ出てくる、というのはたしかにヘンだからな。もしかすると迷宮へは間違って土を捨てに来ちまう、ってことなのかも知れん」
「まぐれ？」
「かもな、ってことだ。が、そうなると問題が出てくる」
　この土をちょっと持って行くとしよう。時々学者連中が欲しがるんだ…ウロコモグラ関係の土はないか、ってな。

「もんだい？」
「一体どこにそんな巨大で真っ暗な空間があるんだ、ってことだよ。この辺りで。迷宮以外に」