TheRootSeller 外伝 4 「そんな彼らに花束を」　[3-7]

　なんでさ。なんで…？　じゃあ、さっきのは…？

　ポコポコは…えっと…僕の荷物の一番上にね、ちょこん、と、ぐるっと乗ってお休み中。
「…うえ…これもポコポコ…あれもポコポコ？」
　あれ、って言っても今どこにいるのかは分かんないけどさ…。

「そうか。そういうことか」
　何だよう、モナークってば一人で何回もうなずいたりしてさ。
「よく見てみろ。こいつ、やけに体がきれいじゃないか？」
　言われて…荷物おろしてそっとポコポコを両手に乗せてみる。…そっかなあ、ポコポコの体で白い…いやなんか違うな。普通に白いってわけじゃなくて少し黄色っぽい白、と言うかね。ホントに真っ白ってわけじゃないんだ。
「こういうのはクリーム色とか言うんだ」
「へー」
「いや、色はどうでもいい。ちょっと前までかなりがさがさしてなかったか？　肌とか触った感じとか」
　…そう言えば…。
「水、たくさん飲み始めた頃かな。時々僕の髪の毛に引っかかったりしてたっけか」
　そんなに長くないんだけど…僕の髪って。でもいつもは僕の頭の上にいるからね。なんかやけに引っかかるなあ、とか思ってたんだけど。
「今はどうだ？」
　そっとなでてみる…。
「うわ。すごい。しっとりつやつやだ…」
　もっちり手に吸い付くような感触？　でもさらりとしてるんだ。もちろん濡れてるわけでもないし。…ほんと、しっとりしてていくら触っても飽きないなあ、これは。

「脱皮したんだな、こいつ。ドウクツキツネザルどもが担いで行ったのは皮なんだよ」
「だっぴ？」
　たっぴだっぴてぃっぴ、たっぴだっぴてぃっぴ…。
「…お前、また何か変なこと考えてるだろ」
「いやいや、そんなことないないない」
「そうか？　まあいいか。脱皮ってのはヘビなんかによくある習性でな。一番外にある皮を一枚だけくるっと脱いじまう。脱皮の前には大量の水を欲しがることもある」
「皮…って痛くないの？」
　僕だったらイヤだな、皮を一枚脱ぐ、なんて。すっごく痛そう。
「俺らとは違うからな。脱ぐと言っても薄い皮一枚だ。…虫も脱皮するが、あれとはまたちょっと違う。ヘビなんかの場合は成長とはあまり関係なく脱皮することもある。脱皮することで体の表面を常に新しい状態にしておく、とかそんなこと言う学者もいたけどな」
「ポコポコもそうってこと？」
　するとモナークってばちょっと考え込んじゃった。
「ただのヘビじゃなくて…火吹き竜だからなあ…その辺は俺にも分からんよ。もしかしたら虫と同じように大きくなるために脱皮してるのかも知れんしな」

　むう。
「そう言えばなんかちょっとおっきくなってるような…」
「さあ…な。俺にはそこまでくわしくは分からん。そういうもんかも知れんってことだ」
　あ。ポコポコ目、覚ました。くるくるくるっとあちこち見回して…僕の腕をするするっとのぼってきたよ。
「なんか目もキレイになってるね」
「ヘビの脱皮は目も一枚脱いじまうからな。知ってるか？　カメも脱皮するんだぜ？」
　…カメ？
「何カメって」
「知らんのか？　こう、コウラがあってな。何かあると手足を中に引っ込めちまう。敵は攻撃できなくなっちまうって寸法だ」
「知んない。…ってかそんな最強ちっくな生き物とかどこにいるの？」
「水辺に多いんだが…そうか、お前湖とか池とか見たことないもんな。井戸にはさすがにいねえだろうし」
「しつれいしちゃうな。池くらいあるよ、エギアにだって」
　一応ね、あるんだよ水のたまったとことか。あんましキレイじゃないけど。
「海は見たことないけどね。あと湖とかっての？　大きな水たまり。そういうのは、まあ、たしかに見たことないけどね」