TheRootSeller 外伝 4 「そんな彼らに花束を」　[3-16]

「うん。僕、そういうのには乗らないよ？　ほんとだよ？」
　って、まあ、こうは言うんだがな。こいつのことだからなあ…何か余計なことしないだろうなあ…。

　二つ目の『分岐点』だ。ここはちょっと狭い。ブロックで言うと2×2。8つの面のうち一つはここへ来た移動床のもの。あと7つのうちの一つに『本流』に接続しているのがあるってことになる。
「…ここ、狭いね」
「ああ。俺の体にでもつかまっとけ。絶対に勝手にどれかに乗ろうとかするなよ？」
「うん…」
　俺の服のすそを、握り締めたままだ。なんだか元気がないようにも見えるが…なんかしおらしいじゃねえか。珍しく。いつもいつもこんな感じだったら、俺ももうちょっと楽ができるってもんなんだがな…。

「よし。行くぞ」
「あい」
　おっとその前に。
「すまん。まだ少し待ってくれ」
　乗っちまうところだったぜ…あぶねえあぶねえ。
「えー？　何なのー？」
「次はちょっとややこしいから気をつけるんだ。いいな？」
「…って、どんな風に？」
「最大の難関ってやつだ。隣の移動床に飛び乗らないといけねえんだ。それも反対方向に動いてるやつのな」

「…？」
「俺の言ってること、分かるか？」
「じぇんじぇん」
　おいおい。仕方ねえ…そうだな…お、これがちょうどいいか。
「これを見ろ。さっきまで俺たちが乗っていた移動床だ。そのすぐ隣に反対方向へ動いてる移動床があるのが分かるな？」
「うん」
「そっち側へ飛び移るってこった。ひょい、とな」
　その場で軽く跳んで見せると、ようやく分かったみてえだ。
「あー、そゆことね。はんたいの方へ動いてる床へ、ぴょん、ととび乗ればいいんだね？」
「そうだ。6ブロックは並行しているから、そんなに難しくねえだろ？」

　………

　と言うことでもうじきその『乗り換え地点』だ。こんな難所はここだけだからな。本当に気をつけねえといけねえ。…何しろサポーターの訓練の一つになってるくらいなんだ。
　移動床はある程度行く先が解析されてるって、言っただろ？　だから延々ループし続ける短い床が二つ、８の字を描いてそれぞれが逆方向に動いてる地点が知られている。そこで跳ぶ練習ができるってわけだ。
　…ああ、今回もそれやっても良かったんだがな。下りてくる階段がちょっと遠いんでな…客連れてる時はちょっと難しいんだ。
「よし。もうじきだ。…あそこの移動床が見えるな？　あれに飛び移る」
「うんうん」
「やり直しはきかねえが、お前ならなんとかなるだろう。…よし、ここだ、それっ！」
　まずは俺が跳んで…そのすぐ後にこいつが跳ぶ。
「うわう」
　振り向いてみるとさすがのこいつでもなかなか大変なようだ。そりゃ、そうか。
「バランス崩しやすいからな、気をつけろ」
　何しろ今まで前に動いていたのに、いきなり後ろ向きに動き出すわけだからな。どうしても体がついていかねえもんなんだ。
「姿勢を低くしろ。腰を下ろしてもかまわん」
　立っているとどうしてももっていかれるからな。少しでも低く…っておい、何してるんだ？　何しようとしてんだ？

「ポコポコ！」

　って、なんでまたあっちの床に戻るんだよ！　何考えてやがんだ！