TheRootSeller 外伝 4 「そんな彼らに花束を」　[3-17]

「ポコポコ！」

　いやあ、夢中でしたよ、あの時は。ほんとうにほんとのむがむちゅーってやつ？
　ポコポコがね、いきなり僕の頭の上からジャンプしたんだ。ほんとにいきなり。だから僕も思わずおいかけちまった、ってわけなんだけど…。

「あり？　モナーク？」
　ぐるりと振り向いてみると…ああああ、モナークがずっとあっちに行ってる…？
「………！！」
　声も聞こえないよ？　えっと、僕、もしかして…。

　また一人？

　いや、今回はポコポコがいるからね。一人ぼっちじゃないよ。…そう言えばここんとこずっとポコポコようすが変だったもんね。ずっと静かって言うか何て言うか…あれ？　どしたの？　ポコポコ？　僕の手の中からするり、と。
　がっちょんがっちょん動いてる床の上に。どしたの…？
「ポポポ」
　僕を見上げてるね。
「ポポ…ポポポ！」
「うん、よし、分かった。僕に任せなさい」
　ひょい、とポコポコを抱き上げて頭の上に。
「よっし。んじゃあ…そろそろ本気ってやつをだしてみますか！」
　景気よく、ね。景気よく。ぱあん、と右拳を左てのひらに打ち付けてみたしりして。

　くうう…やっぱりこういうしちゅ、しっちゅ、しっちゃえいしゃんは燃えるねえ。

「行くよ、ポコポコ！」
　どこへ行くって？　決まってんじゃない。この床を逆に走っていって、さっきのとこからまた乗ればモナークんとこでしょ？　カンタンじゃない？

　………。

「ぐは、はあ、はあ、はあ…」
　なんだこの床？　全然まえにすすまない、いや、進めない？
「ぼ、僕の足より…速いっての…？」
　ううん、ちがうんだ、これは、僕の足より速いんじゃ…ない。
「休むと、一気に、もど、されるんだ…」

　床を反対方向に進もうとしてるわけなんだけど、走ってる間は逆方向に進めてるんだ。でも、いくら僕だっていつまでも全力で走ることなんかできやしない。だから、ちょびっと休んだりすると一気に引き戻されちゃう。で、その分を取り戻そうとまたたくさん走っても、結局ダメ。一回でも止まらなかったらいけるかも知れないんだけど。
「ふう…ふん、ふむ」
　よし、息を整えようか。いいや、座っちゃおう。モナークなら座らないだろうけど、こういう時はおちつかないといけないからね。
「ポポ…ポポ…」
「だいじょぶだって。そんな心配そうな声出さなくても」

　むーん。
　むーーん…むん。

　…そっか。無理に逆方向へ走ろうとするからいけないんだ。おお、そうだった。いどーゆかっていどーしてない床もあるんだ。そこを走ればいいんだね。じゃあ、こっから降りて…降りて？
　なんじゃこりゃ？
　よく見たら周りの床、ぜんぶぜんぶぜんぶ動いてるじゃんか？　んじゃあ、どれかに乗ったらまたどっかへ運ばれるってこと？　えー？
「ポポポ！」
　またポコポコがするりと降りて…？
「ポポ！」

　うわ、なんでまたジャンプすんのさ、そっちもまたどっかへ向かっていどーしてるんだってばあ！