TheRootSeller 外伝 4 「そんな彼らに花束を」　[3-20]

　なんかすごいよ、どんどん景色が流れてく…。

　はやいんだよ、はやいんだ。ここ。なんでか知らないけどさ。
　…うわ、ちょっと、いくら僕でも立ち続けるのが…うおっと、あ、なんで揺れるのさ、こんなに。あわあ、こりゃ、ちょっと…ダメだ。座ろう。コワイや。なんか放り出されそうな気がするよ。このまま立ってると。
　僕が座るとポコポコが、すすっと前に出てくるんだ。すすすすってね。
「ポ…ポポ…ポポポ…」
　僕の顔を見てる…？　あり、今度はあっちを見ちゃった。

　これから進んでいく先だね。…うーん…何かあるのかね…めいきゅーのかべしか見えないや。

　さっきまではなんだかあわてていたのかな、なんかそんな感じだったポコポコも今はおちついてる、のかな？
　僕の足元で前を見つめてるポコポコ。
　…そういえばさ、なんかおっきくなったよね。僕のかんちがいかな。胴体とかさ、なんか…太くなってないかな。前はほそほそで小指くらいしかなかったのに、今はなんだか薬指くらいに見えるよ。長さもながくなった…よね。うん。たぶん間違いないと思うんだけどさ。
　目つきもそれっぽくなってる？　どうなんだろうね。でもさ、今、こうやって床の上に立ってる（前のあしと後ろのあしがあるんだけど、後ろのあしだけで立ってるんだ、これが）のを見るとちょっとカッコいいじゃん、とか思っちゃう。
　こういうのってせいちょうしたってことなのかな。うーん、そうだとしたら深いものがあるね。どの辺まで潜ってるのか分からないけど。こういうのを深い話って言うんだよ…ね、あら、ポコポコー…また？　またジャンプすんの？　って、うわあ。

　何コレ。

　今乗ってるのもすんごくはやいんだけど…目の前になんかぐるぐる回ってるのがあるんだ。いや、ホントに。床がぐるぐるまわってる。数はそんなに多くないんだけど…そのはやさがはんぱなもんじゃないね。…こんなの乗ったら目がくるくるしちゃうよ、って、やっぱジャンプしますかポコポコさん。

　ほういっと。

　…やば。ここは…やばいね。
　ほんきで…目、回りそ。ポコポコは…ええええ、またジャンプする気？　ちょ、ちょっと待って、あたあ。
　また別のゆか。先にジャンプされちまったい。こっちはまだ回ってるからずんずんとどっかへ行っちゃう…。うんと…そだ、ここははやさがはやいからもう一回挑戦してみるよ。さっきポコポコがジャンプしたとこへもすぐに着くよ。うん、よし、よーし、よしっ、ここだ！　ってちょっと前にポコポコがいるね。僕を待っててくれてたのかな、こっちを見てる。よしよし、だいじょぶだよ、僕はここにいるからね。はなれたりはしないよ。

　このゆかは…これまでとは大分違うんだ…ずいぶんとゆっくりだねえ。
　さっきのはやいゆかとは別に。僕はその場に座り込んじゃった。ポコポコを抱えたまま。…でね、ちょっと上を見上げてみたんだ。

　めいきゅうの天井ってさ、見たことある？

　これまではさ、きちんとした天井だったんだ。きちんと？　うん、なんだかどっかのおっきなたてものとか、そんな感じのきちんとしたやつ。まったいらでさらさらの、もちろん石でできてるきちんとした白いの。時々黄色だけど、白いの。
　それがさ、9階層目のここはなんだか違うんだ。まったいら…はまったいらなんだけどね。うん、色が違うんだ、そうだ、何か違うと思ってたんだ。
　僕のまうえなんかね、ピンク…いや、ありゃ赤だね。それっぽい色の天井になってる。ううん、ぜんぶがぜんぶってわけじゃないよ？　たぶんねえ、僕の上だけ。つまり今のってるゆかの上だけ天井に線が、ってことになるのかな。それがずっとずっと先までつづいてる。
　…ちょっと向こうには…ああ、緑色だね。青っぽいのもあるかな。黄色なんかもあるんじゃないかな。他にもいろいろいろがありそうだね。

　なんか意味があるんじゃないのかって？

　…さあ？　なんかあるんじゃないのかな、たぶん。モナークなら知ってると思うよ。

　モナーク…。

　いまごろどうしてるのかな。…僕にはこうやってポコポコがいるからなんとかなりそうなんだけど…ひとりぼっちでだいじょぶなのかなあ。でもあのモナークだもんね、たぶん、んにゃ、ぜったいだいじょぶ。うん、だいじょぶなんだよ。だからそのうちちゃんと会えるんだよ。