TheRootSeller 外伝 4 「そんな彼らに花束を」　[3-22]

　おおう、ここはずいぶんとゆっくりすすむね。こりゃ楽ちんだよ。

　ポコポコ抱えたまま。うん、なんだかね、こうやってると落ち着くね。
　さっき座っちゃったから、今もすわってる。…いいよね、モナーク。こういうのもさ。

　てんじょうの赤い線みたいのをずっと見てるんだー…やっぱりね、ここ、線に沿ってうごいてるよ。うん。まちがいないと思う。だってさ、時々曲がったりするんだけどそれでも進むほうこうへ赤い線が伸びていってるもの。ほら、ずうっと先にのびていってる…。
　…あり？　僕がのってるこの床が赤い線の方へ進んでる、ん、だよね？　線が伸びていってるわけじゃ…ないよね？
　どっちでもいいかあ、前に進んでるってことだけは変わんないんだしね。

　ふーーーー。

　よっと。ちょっと寝転がってみるよ。ああ、こっちの方がよく見えるや。
　僕の頭は今までいた方向にあって、足が行く先を向いてる。…つまりてんじょうの赤いせんは足からずずっと頭の方へ上がってきてるように見える。ゆっくりったっていどーゆかはずっと動いてるからね。さっきまでみたいにとんでもないはやさじゃないけど、僕が歩くのよりちょっち遅めくらいのはやさで赤い線が頭の上へと流れていくのが見えるんだ。うん、いいね。おもしろいね。
「ポポポ…ポポ」
　ポコポコは僕のお腹の上。…ちょ、くすぐったいって。あんまし動かないでよ。
　さっきまでみたいにジャンプしたりしないで、何だろね、ゆったりとしちゃってるって言うか…おちついてる？　なんかそんな感じ。

　あ、でもこれじゃ何が来るか見えないじゃんか。頭と足をぎゃくにしないといけないね。
　よいしょ。一回起きよう。ほら、ポコポコ、僕、起きるよー…って。

　なんか…違うんだよね、この辺。いや、さっきからかな、この辺。なんか…違う。

　イヤな感じとも違うんだけど…何だろ。壁の色が変わった、とかそんなもんかなー…よく分かんないんだけど。
　上を見上げてみたら天井の色もなんか…違う？　違ってきてる？
　そんなことないかなあ、どうなのかなあ、なんかね、えっとね、うんとね、黒っぽくなってるような気がするんだ。今までのめいきゅーのかべって言ったら白とか灰色とか黄色っぽい白とかそんなんばっかだったじゃん？　それがね、あー…なんだか違うんだ。うん。
　やっぱり黒っぽくなってないかなあ…この辺の壁とか天井とか。
「どうかな？　ポコポコ？」
「…ポ？」
「この辺、やっぱさ…色変わってるよね？　そうだよね？」
「ポポ」
「分かんない？　そっかー、僕は変わってきてると思うんだけどね」
　モナークに会ったら聞いてみないといけない。そうだ、モナークに会ったら聞くんだ、このこと。

　ゆっくりといどーゆかは進むんだ。色が変わった（と僕は思ってる）壁は…あれ？　今度は狭くなってきてない？　何かの通路みたいに？　そう言えばさっきまでは他のいどーゆかもあっちゃこっちゃでぎっちゃんがっちゃん音たててたってのに…あれ？　やっぱこの辺、他のいどーゆかがないよ？　全然？　静かなもんだよ？
　思わず後ろを振り向いちまった。
　後ろもそんな感じなんだ。何かの通路みたいに…両手を大きく広げた僕が、二人分くらいかな？　…そんな幅の中をいどーゆかが進んでいくんだ。
　…降りれるね、これ。
　他のいどーゆかが全然なくて、ふつーの動かない床がふつーに僕の乗ってるこのいどーゆかの周りを囲んでいるんだ。だからここから降りて歩いて行ってもいいかな、とか思うんだけど…。
「ポポポ」
　ポコポコがね、なんか真剣なんだ。だから降りないでこのまま付き合っちゃおう。そうだ、帰りにここ、使えるかもね。このいどーゆかにもう一回乗るわけにはいかないでしょ？　だったらここを歩いて戻ればいいってことだよね？　そういうこと…なのかな？

　…お？　いどーゆか、ここで終わり？

　もう動かないってか、床板が下へと潜っていっちゃってるよ。こんなすきま、とてもじゃないけど僕も入れそうもないね。指先くらいなら入るだろうけど…なんかもって行かれそうだからね、そんな危険なことはできないね。
　あ、でも…ここ…なんかの部屋なんだね。ドアとかそういうのもないけどさ。店だったらドアとかあるんだけど、ここは店じゃないのかな…うわ、中は暗そうだなあ…。

　？　ナニこの石？　よく見たら足元に石ころがいくつか転がってるんだけど、小さく彫ってあったりするんだ…数字とか記号っぽいのが。何かのおまじないとかそんなんなのかな？