TheRootSeller 外伝 4 「そんな彼らに花束を」　[3-28]

　むーん……？
　ポコポコ、読める？　っていくらなんでも読めるわけないか。

　いくら僕だってたんごくらいは分かるよ、たんごくらいは。書いた人が何を書きたかったー、とかそんなんまでは分かんない。でもなんて書いてあるかとかそれくらいは分かるさ。あの警備隊のお姉さんに読んでもらった時もそうだったんだ。
　でもねー、これねー。
　字がねー…読みにくいんだ、ほんと。字のじょうずな人ってみんなこんな風に書くのかな？　なんで読みにくくしちゃうんだろうね。
　学校のせんせいの方が読みやすい字、書くよね？　でもさー、これじゃねー…。

　え。読めるとこまででいいから読んでみて、って？

　そだね。ちょっちやってみよかね。
　『わ』、うん、『われ』ってのが最初にあるよ。『わ』、『われー』『わー』『われー』…どっか別の国の言葉みたいだね。
　そいから、えっとね。
　『われ』『さ』、『さ』『さ』っ『さ』…『いご』？　『さ』と『いご』？　
　んでね、『の』『いく』『さ』…『さ』が多いね、まったく…『き』？　『き』だってさ。
　『われ』『さ』『いご』『のいく』『さ』『き』…ねえ。

　ふうむ。ここで僕は考えちゃうね。

　『わ』とか『れ』ってのはホントウは意味がないんだよ。で、次の『さ』がじゅうようなんだ。二回も出てくるからね。
　その二つに挟まれたとこに『いご』『のいく』ってあるね。
　こういう一見意味のないような言葉ってのは実は重要なんだよ、ポコポコくん。
「ポポ？」
「ふふ。黙って聞いてなさいな。めーたんてーのしゅうりってやつを」

　これは人の名前だね。
　コトバってのはどっかに繋がりがあるもんなんだ、ってエギアの薬協支部でシュテラさんが言ってた。あのちょっとコワイお姉さんね。下の酒場がヒマになると上の薬協支部来てキアーラさんとよくしゃべってたんだけど、僕にもよく色んな話をしてくれたんだ。
　たくさんあったけど、なんか色々じけんのおこるやつもあったんだ。
　そこでめーたんてーが出てきてしゅうりを披露するんだ。しゅうり？　そう、しゅうり。なぞをずばばばばって解決しちゃう。

　ある時に話してくれたのが謎のお手紙が来て、って話。そこで出てくるたんごによく分からないのがあって、それが人の名前なんだ。
　人の名前ってのは一見すると意味がないことが多いからね、って。そんな話だった。

「だからこれも『イゴ』と『ノイク』って人の話なんだよポコポコくん！」
「…ポポ…」
「まあ、そうせかしてはいけないねえ…ちょっち待ちたまえ。えっと、続きを読んでみよう…」

　『を』『かく』『に』…『にん』『せ』『り』…ずいぶんと妙な名前が多いんだね。

「ふうむ。…これは多分泥棒がリストを作ったんだね」
「…ポ…ポポ」
「何のためにって？　そりゃあ盗みに入るために決まっているのだよ！　あ、そっか、イゴとノイクってのは泥棒二人の名前なんだ。で、これから後に出てくる人たちのとこへ盗みに入る、そのためのリストなんだ！」
「………」
「まだ先があるからね。いや、これは大犯罪のよかんがしてきたよ、ポコポコくうん！」
「……ポポ…」

　『そを』『ここに』『し』『るす』『ものな』…『り』ややや、これはついにはんこー予告ってやつになったきたね。ルスとかそんなたんごが出てきちゃあ…言い逃れも何もあったもんじゃない。もしかして僕ってめーたんてーになれるんじゃ…？
「ポポポポ…ポポ」
「やだなあ、そこまでほめても何も出ないってば」

　えっと、さて…お次は？
　『ひふ』、『ひ』…あれ？　『ひふき』…『りゅ』『う』？　これって、つまり…火吹き竜ってこと？　まさか、ポコポコも事件に関係してるっての？　いや、それはまさかさすがに…ねえ？　めーたんてーのじょしゅがじけんにかんけーしてる、なんて、ねえ？