TheRootSeller 外伝 4 「そんな彼らに花束を」　[3-36]

　なんなのさ、ほんとに。

『我は迷宮を統べるオールドマン…王と言ってもいい』
『これからも我があるじはこの迷宮に君臨し続けるのだ…』

　なにを言ってるのか分からない。分からないけど…なんか、イヤだ。これ。これ…イヤだ。

『ほう？　カギョリ准将の娘よ。…面白いものを持っているな』
　間に合わない…ガード、違う…？
『ほう…これはこれは。なかなかの珍品ではないか。なあ、キャンベラ？』
『御意に。これはスコット様の筆跡ですな』
『スコット…ああ、そんな者もいたな』

　あの紙切れ…一体いつの間に？　僕、ちゃんとしまってあったのに？

『ふむ。…われさいごのいくさきをかくにんせり　そをここにしるすものなり　ひふきりゅうはこのばにおいてつぎのだんかいへすすみたり　めいきゅうのしんおうぶへむけてあらたないくさきをかいたくす、か。あれもこれに辿り着いたか。見所はあったようだな』
『は』
「なんなのさ」
『娘よ。火吹き竜の本当の存在理由を知っておるか？』
「…そんざい…りゆー…」
『我があるじ。この者にはちと早すぎるのでは…』
『よい。聞かせてやろうではないか。その幼いつむりの上に頂く異形の生き物の目的を、な』

『火吹き竜はそもそもはこの迷宮にいた生物ではない。誰かが意図的に持ち込んだ可能性が高い。しかしそれはどんな民族であったか、人物であったかは分からない』
『その目的は…迷宮の開拓』
『その深奥部は人跡未踏な迷宮だが、はるか古代に創設された時には無論誰かが立ち入っていた。が、その事実も長い年月で埋没してしまう。今では十分な情報も何もほとんどないような状態だ。100階層目や300階層目が存在しているのか、それすらも確定情報がない』
『火吹き竜の生育にはコチュウゴケとホクチゴケを必要とする。コチュウゴケは迷宮では普通に見られる。問題はホクチゴケだ。現在では5階層目と13階層目でのみその存在が確認されているが、さらに深い階層にも存在することは想像に難くない』
『さらにつる性キロの実も必要とする。これを食草とする蝶も確認されている。そのため火吹き竜は本能的にこの蝶を襲うこともある』

　………。

『火吹き竜はその独自の感覚によりホクチゴケやつる性キロを求めて深奥部へ向かうだろう。後はそれについて行けばよい。そうすれば自然と迷宮の奥底へと誘われるだろう…』
「…なんかよく分かんないけどさ」
『さもあらん。いたしかたないこと』
「それがポコポコとどうかんけいしてくるのさ」
『その火吹き竜はまだ若い。いま少し年月を経ればやはり迷宮の深奥部へ向けて旅立つだろう。…娘よ、そなたはその火吹き竜の守り人となって最深奥部を目指すのだ』
『通常ならば火吹き竜は人には馴染まない。それがここまで馴染むとは…非常にまれなケースだ』

　やっぱりよく分かんないんだけど…何が言いたいんだろう…？

「ポ？」
「どしたの？　ポコポコ？」
　誰か…来る？　誰…って…。

「やっはーい！　モナークだー！」
「…なんだやっぱりこんなとこにいたのかよ。大丈夫か？　どっかケガとかしてねえか？」
「うんうん、僕もポコポコもへいき！」
「あら。マナメちゃん。久しぶりね」

「え？　お姉さんも来てたの？　うわ、なんかスゴイね！」