TheRootSeller 外伝 4 「そんな彼らに花束を」　[3-37]

　ようやく合流だ…なんだねえ、このバカみてえな明るさは。
「あなたに会えて嬉しいのよ」
　そんなもんかね。でもちょいと気になるのがアレか…。
「アレ…って…」

「キャンベラ？　あなた…本当にキャンベラなの？」
　そう見える、ってやつなんだろうな。…俺からはどう見ても黒いもやもやっとした塊ってやつだ。
『久しいな、アデレード。たしかに私は…キャンベラだ』
「どうしてこんなところにいるの…それに…」
『こちらは我があるじ。かつてラドルフ・オールドマンと呼ばれていたお方だ』
『ふむ。…アデレード、いや…バラハスか。スコットとは面識があったようだの。あれも一つの真実に気づいたようだ…そなたの影響があったのかも知れぬ』

　…何だかなあ…なんだあの黒いもやもやは。

「…モナーク」
　ぐい、とすそを引っ張ってくる。痛えよ。
「なんだよ」
　その俺のすそを、今度はしっかり握ってくる。
「あれは…いけないものなんだ。僕にはわかる」
「そんなもん見りゃ分かるよ」
「そうじゃない」
　さらに、ぎゅっとすそを握る…おいおい。
「あれはここにいちゃいけないものなんだと思うんだ」
　しっかりと前を見てやがる。もちろん前にいるのはあの、黒いもやもやだ。

「それにポコポコをりようする、って」
　そう言やあのヘビモドキは…って、いつも通りこいつの頭の上か。寝てるのか？　やけに静かだな…？
「利用…何すんだよ」
「めいきゅーの、さらに深いところを目指すんだって」
「深いところ？　地図だってあるんだぜ？　100階層目くらいなら問題ねえぜ？」
　するとゆっくりと首を横に振りやがる。
「それよりふかいところだと思う」
「それより深い…？」

　そりゃあ、200階層目とか300階層目ってのは俺らでもよく分からんが。
「それとヘビモドキがどう関係してくるんだよ？」
「ポコポコたちは深いところへもぐるほうほうを知ってるんだって」
「…へえ」
　なんだそりゃ。階段だってあるんだ、そのまま下っていきゃ深い階層に潜れるもんなんじゃねえのか？

　げ。なんだ…ぞくっと…しやがる？

『…そう簡単にはいかぬ、ということよ』
　いつの間に？
『記録にはあるやも知れぬ。行った、と言う者もあろう。しかしそれは真実ではない』
『本来の深階層は人目に触れぬ域にある。そこへ辿り着くには多大な困難を伴う』

「…どうなってんだ？」
　さっきまであっちでしゃべってたと思ったんだが…。
「どうもこうもないみたいね」
　なんか疲れた顔してるな、おい。大きくため息までついてやがる。
「やっぱりこの世のもんじゃねえのかね」
「そうなんじゃないの？　二人ともあんな風なんだし」
　やれやれ、と今度は首を振って…またため息。
　この手のウワサ話には困らねえのが迷宮なんだが。それが目の前にこんな風に出てきちゃあなあ…。