TheRootSeller 外伝 4 「そんな彼らに花束を」　[3-40]

『そんなわけあるかー！』
　うわ、びっくりした。
『ティムはな、ティムはれっきとしたオールドマン家の跡取りだぞ！　そんなことするわけないであろうが！』
『何を根拠にそのようなざれ言をー！』

　なんかモナークが変なこと言っちゃったみたいだね。
　くろいかたまりが…大きくなったり小さくなったりしてる。おっかしーな、コレ。

「ウソじゃねえ…と思うんだがな。他にはこんな話もある」
『も、もう耳を貸さんぞ、そのような言に何の…』
「クレータ議会だ。迷宮はクレータにとって重要な資源だからな。オールドマン家からの申し入れをすでに受け入れていて、実はその準備を進めている、という…」
「あら。もうそんな話になってるの？」
　するとモナークがこそっとお姉さんにささやくんだ。僕にも聞こえる。
「…そんなわけねーだろ。オールドマン家のことだって噂にすぎねえってのに」

　…つまり…ウソってこと？

『おぬし、おぬしは一体何者なのだ…なぜそのようなことを知っておる！』
「だから言ったじゃねえか、俺はただのサポーターだって。ただ、サポーターはサポーターで安穏としてるわけじゃねえ」
「色々仕入れておかないといけないってわけね？」
「そうだ。だからそういう話も知ってる。そんだけだ」
　おお…なんかモナークってばカッコいいぞ。
『サポーターとは全てそのような人間ばかりなのか？』
『我があるじ。全てがそのような者ばかりではありますまい。この者が特別なのでございましょう。ほとんどの者は怠惰でどうしようもない者ばかりでございますから』
「何言ってんだかなあ、あんたもそのうちの一人のくせに」
　モナークが何か小さく言ってるね。あの黒いのもサポーター…ってことかな。

「気になるんなら今から確認してきたらいい。どうせ地上にも戻るんだろ？」
「そうね。その方がいいんじゃない？　キャンベラ、あなただって情報源みたいのが地上にもあるんでしょ？」
『我は…』
「あんたも色々知ってるんだ、その情報はどこから仕入れてるんだ？　地上じゃねえのか？」
『我は…』
『よい。もうよい。…我らは迷宮内でしか存在できぬ。その迷宮が今のようではなくなる、と言うのなら…去るしかあるまい』

「…どゆこと？」
『幼き者よ。我らはこの世の者ではない』
「へー、そーなんだ」
『…我らはここでしか存在を続けることができない。この迷宮においてのみ、だ。それが続かなくなるのなら…』
「でもめいきゅーが消えてなくなるわけじゃないでしょ？」
　何言ってるんだかなあ、このくろいのは。
「めいきゅーはめいきゅーなわけっしょ。ならそれでもいいじゃん」

『ふ。やはりおかしなことしか言わぬな。オールドマン家の関わらぬ迷宮など迷宮ではない』
　…モナークを…見てる？
『我らは地上へは行けぬ。迷宮でしか存在できぬ』
『我が知識は地上で得たものではない』
　あれ？　なんか…増えてる…？
『我はいくらでも我を作り出すことができる。我らは全ての町に存在し、店に存在し、通路に存在する』
　うわ、これは…ちょっとねえ…一体どれくらいいるんだか…部屋、埋まっちゃう？
『そなたらは我をたやすく認識することはできぬ』
『故に我は迷宮に潜った全ての者の声を聞くことができる』
『そこから知識を得るなどたやすいこと』
『それらを他へ漏らすこともできる』
『我だけが保持することもできる』
『そうだ、我は…』

「なんか、めんどいね。あんまし考え込まない方がいいんじゃないの？」