TheRootSeller 外伝 6 「魔法使いを探せ！」[1-31]

「まあ、いいわ」
　デイブ氏が「準備が整いましたー！」と朗々とした美声を響かせている。すでに何人かが並び始めている。
「あれは…あたしが落とす！」

　むん、とドリスにしては珍しい、彼女には似合わないくらいの気合い？だが。…当然バイヤー二人は冷めきった表情のまま、である。
「勝手にしな」
　膝の上に肘を置いて、さらに手のひらを上に向け…そこへめんどくざそうにあごを乗せているジェド。
「そうですね」
　どこから取り出したのか、数枚ほどのぺらぺらの資料？を…やはりめんどくさそうに眺め始めるミラン。
「なんだか二人とも冷たいのねえ」

「そりゃそうだろう。お前に協力して俺らに何の得がある？」
「それにドリスさんは一応ジェドの助手、という立場ですし」
　眺めていた資料を指先で軽く、ぱちん、と弾いて見せる。
「雇用主が助手に協力する、というのもどうなんですかねえ…」
「それは別にいいさ。こうなったこいつに何言ってもムダだからな」
　二人の話を聞いているのかいないのか。ドリスはドリスで指先をほぐすかのように、何かを威嚇するかのように、ぼきぼきと指を鳴らしていたりする。
「…え？　何？　どうすんの？」
「な？」
「たしかに。しかし…お優しいことだねえ」

「自分の金で落とすんなら別に文句はないってことだ」
「そりゃもちろん」
「後できっちりこっちの仕事してくれればいい。まだまだ前座でヒマだからな」
　ぴく、とミランの表情が動く。それまでの紳士然、とした顔から…捕食者とでも呼ぶべきやや暗い顔になる。
「…ふむ。やはり君も…か？」
「当たり前だろ？　こういうオークションならどこかに山場がある。その見せ場を逃す手はない」
「同感だね。恐らくは…最後かな…？」
「そんなところだろうな。本当の真打ちは最後のトリと決まってるもんだ。絵画か焼き物か、その辺は分からんが、な」
　お互いに本気で狙っているモノがあるらしい。バイヤーにはバイヤーのやり方がある、というところだろうか。しかし。

　獲物？を前にしたルートセラーにはそんなもん関係ないようである。
「じゃあ…協力してくれたら金貨出す。どお？」
「明るく言うなあ、おい。これは仕事だぞ？」
「分かってる」
「そもそも俺がお前を今雇ってるんだが？」
「じゃあ、この一件だけあたしがあんたを雇う」
　それを聞いて、さすがに、ぷ、と吹き出してしまうミラン。
「そりゃ面白そうですね。二人分、ということで合わせて何枚くらい出してくれます？」
「んー…50枚」
「話にならんな」
「よし。100枚」
「もう一声」
「200」
「300なら」
「じゃあ僕は400で」
「250」
「刻んでくるな。…290」
「僕は350で」
「…仕方ないわね、298枚」

「よし。それなら乗った」
「まあ、時間つぶしくらいにはなりそうですね」
　…って…なんでオークションの前に競りゆうがな…あたしら…？