「はーーー?」
「おいおいおいおい、ジェド?」
「いやー、ははは」

「どうだった?」

 ふふん、とやけにカッコつけて親指を立てて見せたりしている。が…
「51000!」
 あっさりと引っくり返されてしまった。当たり前である。

 これがもしもっと終盤で値が落ち着いてきていたのなら(50000枚という金額でもあるし)まだいけたかも知れない。タイミングとしてはそろそろ決定か…と、その瞬間の寸前くらいか。オークションに慣れているはずのバイヤーならその瞬間が分からないわけはない。
「あー…いくらなんでもなあ…」
 さすがのミランも呆れ顔である。

「なんでここで全額ブッこんだのよ?」
「あ? ここで一気に攻勢かけるべきだろうが?」
「それで負けちゃったら意味ないじゃない!」
「負けるかどうかなんてのはその時の運と勢い次第じゃねーか!」
「運と勢いでどうにかなるもんでもないでしょうに」
「そこをどうにかしていくのがスジってもんだろ?」
「えー? もう知らんちゃ、何しゆうがでよ…もう!」
「こっちだってもう知らねえよ、ったく、せっかく協力してやったってのによ…」

 ぷい、と席を蹴るように立って二人とは反対の方へ行ってしまう。

「ドリスさん…」
「ホントにもう知らんちゃ。まったく何してくれちゃったかなあ…まったく…」
 がしがしがし、と頭をかきむしる。
「…ふむ」
 しかしちょっと考え中、といった様子のミラン。やや上を見るような、視線だけを上げているような姿勢。
「ちょっと待っていてくださいね。…オークションもそろそろ終盤ですし」
 と告げると返事も待たずに行ってしまう。

 ジェドは舞台袖のさらに横手、声は聞こえるが舞台の上は見えない、ちょっと薄暗いところに立っている。…ぽつねん、と。
「おいおい」
 あえて明るく…近づいてみる。
「やっちまったなあ、おい」

 くる、とこちらを向く様子は…顔面蒼白、といったところだろうか。よく見えないのだが…少なくともさっきまでの勢いの良さはない。
「ああ…」
「ちょっと失敗しちまったな」
「…ああ」
 明らかに後悔はナントカ、という状態。

「どうだい? ここで少しいいとこ見せてみないか?」
 うん? と隣の友人を見るジェド。
「このままってわけにもいかんだろ? まあ、それにはお前の手腕が必要だが…? どうするね?」

『では…これにて落札、金貨51180枚でございます!』
 デイブ氏の低くてよく通る声はここまで朗々と響き渡る。
「落札…されちまったぞ?」
「ああ。でも僕らの戦いはまだまだ続くさ、違うかい?」

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