TheRootSeller 外伝 6 「魔法使いを探せ！」[1-43]

「…って何二人で納得し合ってんの？」

「…まあ、今のあなたにはあんまし関係ないかなー、てなとこ」
　実際、かなりビミョーなところなのである。
「大人のハナシってとこ？」
「なんだそりゃ」
「ンン。とにかく、でございます。エーミール様がお気に召すようなプレゼントを探すのが本来の目的なのでございます…」
「それは、まあ、分かったんですが」
　それだけではちと、分からんこともある。
「それとコレがどう結びつくんです？」

　パウカイ獣紙である。今は細長い木の箱に入っているのでその全容までは確認できないが。
「え？　だからコレがそのプレゼントってこと」
「…こういうの好きなの？」
「うん」
　…骨董好きとかそういう人なのかな。
　そりゃ、まあ、貴族ならそういうのが多そうなところではある。ホルトホーフェンの家は目の前の没落貴族なんぞとは比べ物ならないほどの「超」セレブな貴族だったりするし。お金があるとこういった骨董趣味に走りやすくなるものではある。あるいは…あれほど大きな家、となると最初っから、生まれた頃からああいう品々に囲まれているのかも知れない。そんな中でいわゆる「審美眼」的なものを磨いてきたのかも知れない。
　ただ、なんとなくもっと一般的？なのが好きなんじゃないか、と思ったりもする。さすがにパウカイ獣紙てのは…？
「こう言っちゃなんだけど…結構マニアック？」
「そう。よく言われるんだー…へへ」

　…ん？　ちょっと待て…？

「あんたが、ってこと？」
「そう。あたしが、ってこと」

「エーミールさんへのプレゼントなんでしょ？　その人がこういうの好き、って話なんじゃ…」
「そりゃエーミも前は結構好きだったんだけどね。でもあたしも大好き。こういうの。いつまでだって眺めてられるもん」
　思わず今の保護者？の顔を見てしまう。ちょっと困ったような、しかたないなあ、とでも言いたげな表情のアデラではある。
「いつの頃から、でしょうか…。テオドラ様はクルガ紋様が大のお気に入りなのでございます。特に上質のパウカイ獣紙に描かれたものなど、特にお好きでお好きで。それはそれは楽しそうにご覧になり続けるのです…」
　それでさっきはあんなに喜んでたのか、と一応は納得。
「つまりはあんたが大好きなものを相手方へのプレゼントにしてみた、ってこと？」
　そういうことならそれはそれで押し付けがましいことになりそうなのだが…。

「うん。そう…ね。昔は…ね。エーミも結構好きだったんだよ？　うん。ね？　アデラ？」
「左様ですね、テオ。しかし人は変わりゆくもの、と申します。今のエーミール様にはあまり合わないかも知れません。それは重々承知、のはずでございましょう？」
「それはさ、そうなんだけどさ」
　座席の下の足先を、前後に揺らしてみたりする。
「なんか…ね？　思い出してくれるかなあ…って。あの頃のこと」

　なんとなく分かってきたような、そんな気がしてきた。…つまりは変わってしまった友人へのプレゼントで…一種のバクチなのだろう、と。ドリスはてっきり相手のエーミール氏はもっと年上で、骨董品に興味あってしかも自分も好みなものだからこれを選んだのだろう、と思っていたのだが。
「じゃあ…あたしへの依頼ってのは？」
「アンフェルン様。ルートセラーは非常に豊富な知識と人脈をお持ちと存じます。こちらの品の正確な鑑定のできる方をご存知ないでしょうか…？　具体的にいくらほどになるのか、例えば別のオークションにかけたらいくらくらいになるのか、とか…？」

　そういうことならジェドかミランに尋ねてみればそういう人物を紹介はしてもらえるだろう。…しかし
「それでいいの？」
「いいって…何が？」
「金貨の枚数で思いの深さが伝わるか…ってこと」