TheRootSeller 外伝 6 「魔法使いを探せ！」[1-45]

「ところで…勝負って、高価でいいもん持ってきたもんが勝ちってわけ？」
「そう思います？」
「まさか。そこまで単純じゃあないでしょ？」
　それだったら単純にカネの勝負になってしまう。没落貴族が出てくる幕がない。
「そういうことですわ。まあ、ああいったはるかな雲の上にお住まいの方々がお考えになることなんて…よく分かりませんけども」
　軽く肩をすくめて…全く困ったもんです、とでも言いたげな笑みを浮かべて見せる。
　そんなアデラの様子からすると。そこまでご執心、というほどでもなさそうである。
　…所詮はイチハチのハチの方だしなあ…。
　これがホルトホーフェン本家の、とまでいかなくても第一分家の、とかそういうことなら反応が違うのだろう。一応？没落貴族なのである。どこかにでも起死回生の芽があるのなら生かしたいはずなのだが…そこまででもない、と捉えているのだろう。

「…でも参加はする、と」
「ええ」
　二人の視線は…獣紙眺めているお気楽娘に注がれる。
「…こっちもめんどくさそうな」
「それほどでもないのですけれど。…幼年学校の頃から知り合いだったのですわ」
「あ、そっちからか」
　別にボーイ・ミーツ・ガール的な劇的かつ運命的な出会いがあったわけではなさそうだ。
「あの頃はお互いのお家にも行き来してたりしてたのですよ」
「へー…アデラさんも？」
「もちろんご一緒させて頂いてましたわ。もっとも…あちら様も御従者はお一人きり。しかも会うのは庭先のあずまやのみで、と。館の中にも入らせては頂けませんでしたけど」
　その辺はいくらイチハチとは言え没落貴族相手ならこの程度、ということなのだろう。たしかにめんどくさいところではある。

　…うーん。

「ね。テオドラ」
「なに？」
　獣紙から目を離さず、半分だけ顔を向けてくる。
「ホルトホーフェンとの話…正直なとこ、どう考えてんの？」
「そりゃあ、勝つよ？」
「それだけじゃなくて。正直なとこ」
「えっとねえ…」
　手慣れた様子でくるくるっと獣紙を巻いて…丁寧に箱に収める。
「前みたいに、なりたい」
　…まー…なんて幸せそうな顔してんだか。
　アデラを見ると、やはり肩をすくめて見せている。全く困ったもので…と言いたな笑み浮かべて。

　…よし。

「じゃあ、こういうことにしましょっか。…必要経費と成功報酬。そうですねえ…成功報酬は銀貨10枚でいいや。必要経費ったって現状じゃ、特にないし」
「…それだけでいいんですの？」
「ただし。あたしが何かやっても勝つ保証なんかできません。できる限りのお手伝い、ということで」
「分かりました。…テオも、それでいいですね？」
「ん」
　箱を布でくるくるっと包んで（この辺もやけに手慣れている）ひょい、と背中に背負ってしまう。
「それでお願い。いやー、あたしとアデラだけじゃ正直何をどうやったらいいか、よく分かんなかったしねえ」

　…こうなったら後は…。
　舞台の上の動きが激しくなってくる。デイブ氏があちらこちらに指示を出している。そろそろ休憩時間も終わって、オークションが始まるのだろう。
　…あたしだけじゃあ、役者が足んないわねえ…。
　会場内を見渡してみる…どこへ行ったがやろ？　あの二人？

　…あ、いた。
　出口そばにジェドとミラン。何やら話し合っている。ミランの方がはるかに背が高いから、二人揃っていると結構目立つ。しかし…そのそばにもう一人、いる…。