TheRootSeller 外伝 6 「魔法使いを探せ！」[1-46]

　…誰だろ？
　痩せた、あまり健康そうには見えない風体。古ぼけた旅行鞄に…度の強そうな眼鏡。
　…あ、さっき二人と競っていた人かあ…。

　出口そばの二人と一人。…ちょっとばかり真剣そうに見える。ここからではよく分からないが、ミランの少し難しそうな顔が、ちらり、と見えた。
　…何か、説得してる？
　ジェドがやや大ぶりな仕草で手を振り回している…ような。対して相手はやや迷っているようにも見える。…何だろうか…？

　やがて会場にはデイブ氏の朗々たる声。
「みーなさま…それではこれよりノスクルバーグオークショーーン…第二部の、開始でございます！」
　壇上でくるりと一回転。この巨体ながらなかなか俊敏な動き、なのだが。
　…あ、行っちゃう。
　出口そばの三人はミランの何か合図で移動して行ってしまう。そしてオークション会場を後にしてしまう…。

「第二部に賭けるんじゃなかったが？」
　隠し玉がどう、とか真打ちがどう、とかなんかそんなこと話してたのに。
「？どうか…なさいましたか？」
「いや。えっとね…」
　一瞬、戸惑う。どっちを追ってどっちを残すか…
「いいや！　二人ともちょっと来て！　協力者に会わせるから！」

「あ、いたいた」
　果たしてジェド達は大広間前のソファに座っていた。いや、正確にはミランとジェドは立ったまま。痩せぎすの男性のみが腰を下ろしている。ホテル・カラダリの大ホールである。大きな女神像が中心に据えてあって、そこかしこにこういったソファがしつらえてある。ついでにソファ以外にもテーブルと椅子の組み合わせとか花が活けてある大きな花瓶とか、そういった調度品もあちこちに置いてある。もちろん、どれもこれも立派で豪華なものばかり。
　彼らのそばにあるソファだって無論のことドリスがいつも座っているような固くてごつごつした代物ではない。体の半分が沈み込むほどに…とまではいかないが、座り心地は最高に近いのだろう。
　明り取りも兼ねている天井一面の薄いステンドグラスから緩く降り注ぐ光もまた、柔らかく照らしている…。
「おーい」
「ん？　ああ…あ、そうか、おいミラン」
「…お、そうだね」
「…何が？」

　…何だろ。

「ドリス。こちらはフォルテウさんと言ってだな…」
　痩せぎすの男性が静かに立ちあがる。
「あ、うん。そうだ、僕は…フォルテウ」
　おずおずと手を差し出してくる。下を向いたまま。
「ご丁寧に。あたしはルートセラーのドリス・アンフェルンです…よろしくお願いします」
　…何だろ。
　軽く握手。
「いや、こちらこそ…よろしく。じ、実は、こちらのふた、二人、に、て、手伝ってもらう、う、ことにな、って、その…」
「フォルテウさんはあのヴェーラ村の出身なんですよ」
　見かねたのかミランが引き取る。
「あの大ペルシカムの実直系弟子の一人にして元筆頭候補だったんですが…」

「え？　大ペルシカム？　え？　どこ？　どこにいんの？　会う会う会いたい！」
「いけません！　テオ！　…落ち着きなさい、はしたないですよ。…それに大ペルシカムはすでに亡くなっておいでです。ここにおられるはずはありません」
「えー、ま、そっかー、そうだよねー」
「…どなただよ？」
　こそっとジェド。
「あのミラモンテス家の御令嬢と…そのお付きの方」
「…あのお荷物貴族か」
　そのお荷物貴族のお気楽娘はフォルテウ氏の正体？を知って握手しながらその手をぶんぶん振り回したりしている。
「まあ…そうなんだけど、ね」