TheRootSeller 外伝 6 「魔法使いを探せ！」[1-54]

「なんだ何かいい手でもあるのか？　さっきまではどうしよう、とか言ってたくせに」
「全然。でもね、ヒトってのは成長するもんなのよ。そのうちいい案でも出てくるってもんよ」
「…結局他人任せかよ。ったく」

「何、要は相手が最も気に入るプレゼントを用意すればいいんだろう？」
「まあね」
「じゃあ話は本当にカンタンじゃないか。お相手のご貴族ぼっちゃまもパウカイ獣紙が好きなんだろ？　落としたあれ出せば一発じゃないか」
　そんなもんだろ、とジェドは言い切るのだが…
「…そう簡単なら問題はないのですが…」

　少し、考え込む表情のアデラ。右手を頬に軽く添え、視線をやや下に下げる。
「それが結構前の話なのですわ。今は…」
「ああ、そういうことか」
　ふう、と息を吐いて天井を見上げる…ジェド。軽く頭をかく。
「好みが変わっちまった…ってか」
「はい。わたくしとテオがお相手方にお邪魔させて頂いていたあの頃は、それはそれは、もう…お二人とも頭がぶつかり合うくらいに熱心に見入って語らっておいででした。…とは言っても本物を持ち出すわけにもいきませんのでご覧になっていたのはレプリカでしたが」
「パウカイ獣紙のレプリカ、ってこと？」
「ええ。分家とは言えあのホルトホーフェン家ですわ。本物のパウカイ獣紙もお屋敷の倉庫にお持ちでした」
「クルガ紋様付きか」
「もちろん」
「…見てみたいな、ソレも」
「おいおい」

「それはともかく。…相手が気に入らないかも、ってなもん渡しても、なあ…」
「うーん…」
　さすがのドリスもちょっと落ち込んだ顔になる。…考えてみると…本当にどうしようもないような気がしてくる…。

「なーに、みんなでくっらーい顔してんの？」

　アデラの隣に、どすん、と体重かけて座ってくる…テオドラ。
「いけません！　そんなお行儀の悪い！」
「いいじゃない、今日くらいはさー…あはは、楽しかったー、うふふ。何せホンモノよ？　ホ・ン・モ・ノの…職人だもんね、パウカイ獣紙のさ」
　…当のフォルテウ氏は…かなり復活している様子である。やはりミランと小声で何か話し合っている様子がここからでも見える。
「ご迷惑ですよ。あんなに質問ばかりしては」
「えー？　そっかなー？　色々聞かれるのって気分いいじゃーん？」

「じゃあ…さ。聞いていい？」
「うんうん。なになに？」
「お見合い、成功したい？」
「うん」
「そのためにさ、必要なもの…いる？」
「うーん…」

「いいかな。あたしにはコレがあるし」

　と、細長いその箱を、ぎゅーーーっと。極上の満面の笑みで。
「あ、でも、ちょっと箔付けくらいはね。それくらいは欲しいかな」
「分かった。トップクラスの鑑定人を用意してやる。立派な切り紙拵えてもらおう」
「やるじゃん、さっすがドリスの彼氏」
「バ、バカ言ってんじゃねーよ、そんなんじゃねーよ」

　…そっか。
　…それで…いいんだね、テオ。