TheRootSeller 外伝 6 「魔法使いを探せ！」[2-51]

「やだなあ。手紙よこしたじゃないですか。探したんですよ？　どうせどっかの店にいるんだろうって」
「ん？　あれ？　そうだったっけか？」
　どこかからかテイクアウトしてきたのか、それともここでも売っているのか。慣れた様子で手にしていた包みを頬張ろうとして…？
「ほほう？」
　がぶり。口の端のソースを軽く親指で拭って…
「やっぱりツレがいたのか。なるほどな」

　つと、立ち上がる。
　…おおっと…
　背の高い女性である。ドリスも背の高い方だが、こちらは彼女のそれとはまた違った印象を受ける。「体格が大きい」とでも言ったら良いのだろうか…？　しかし男性、例えばクモキリヤのような体格の良さとは違う、そんな風にも見える。
「カレン・サンド・ジョンストンだ。局員が色々迷惑をかける。すまないな」
　位置的にドリスの方がクモキリヤよりも前にいるから、彼女に手を差し出してくる。
「ドリス・アンフェルン…」
　…でっけー…
　想像以上に手が大きい。余裕で包み込んでくる。
「まあ、そこまで迷惑ってほどでもないけど…？」
「左様」
　クモキリヤとも握手。
「なかなかに楽しい御仁ゆえ、な」

「そう言ってもらえるとおれも助かる」
　字面だけだとまるきり男性のセリフである。
「ルチアナは友達の少ないやつだからな。ちょっとは安心、てなとこだ」
「えーー…局長ほどでもないですが？」
「ああん？　おれには友達は山ほどいるぞ？　お前が知らんだけでな？」
「じゃあこないだの共同論文発表会の時、誰とも話してなかったの、なんでですかねえ？　結局なんやかんや細かい話し合いやら私がやって…」
「バ、バカ、ありゃ、お前…研究発表だぞ？　発表だ、ふん、馴れ合ってなんぞいられるかよ」
「誰からも手紙来ないじゃないですか」
「つ、月に一度くらいは、だな…」
「あれはただの請求書じゃないですか。資材調達屋さんの」
「それは、それは…うむ、それは…だな…」

　…あーーー
　ルートセラー二人の感想である。
　…やっぱこりゃ色々とダメな連中だ…

「とりあえずカレンさん」
「う、うむ、なんだ？　えっと…ドリ、ド…」
「ドリス・アンフェルン」
「そうだ、ドリスさんだ。うん、いい名前だ。ドリス・アンフェルンさんだな」
　…ホントにそう思うなら目を見て言って欲しいがやけんど
「で…何かな？　ドリアンさん」
　…斬新だなあ…
　正直、こんな略し方されたことは、ない。
「そこ、笑うな」
　後ろのクモキリヤを肘でつつく。
「えーと。結局ルチアは旅に出てもいいのかな、と。それを聞きに東学区まで来たんですけど…？」

「ああ。構わない。最初からそのつもりだったからな」
　…あら。あっさり
「じゃあなんで一度戻ってこい、なんて手紙を…？」
「一度お前の覚悟を聞いておきたかったからな。それも、もういい。問題ないようだろ。友達も二人、それもなかなか頼りになりそうなルートセラーだしな。ただ…」
　くるり、と視線をドリスに向ける。