TheRootSeller 外伝 6 「魔法使いを探せ！」[3-11]

『ないわけじゃないけど』
「あるんかいっ！」
「そりゃあさ、話の流れ的にはここくらいね、って言った方がいいのかも知れんけど…」
「そうだのう。大街道沿いなら朝は大抵、どこでもこんなものだ。朝方に皆、店を出し始め…夜になる前に自分の村に帰って寝る、というものだのう…？」

　ぷくー

「あ、いや、えーーっと…そう、ここら辺はね、そう…もちっと栄えてるかなー、と。少し、違うとこもあるかなー、と」
　肘でクモキリヤを突いてみたり。
「ウム。ウム。そうだそうだ。さすがはセントレランド、といったところ…そうだのう…あの屋台など、他ではなかなか見られぬぞ。ウム。なかなかのもの、と見た！　考古学者殿、ちと覗いてみようではないか？　な？　な？」
「そ、それいーね、さー、ルチアー、おごったげるからー、ほーら、串焼きだぞー？」
　串焼き一本でこのぶんむくれがどうにかなるわけでもないのだが。そこはそれ、百戦錬磨？の中堅ルートセラー二人である。なんとかかんとかなだめすかして…どうにか機嫌も曲がってたヘソも直ってくる。

　太陽はすっかり辺りを照らしている。丁寧に。
　朝を過ぎてくると独特の慌ただしさは失われて…やがてちょっとした落とし穴のような、落ち着くこともできないがそれでも居心地は悪くない、そんな風な一種「まったり」とでも言いたげな時間が訪れてくる。それぞれの屋台は一仕事終えて再び仕込みに入ったり腰を下ろして休憩していたり。
「あ、こんなものもありますよ」
「どれどれ？」
　一風変わった屋台が出て来たりするのもこの時間帯の特徴ではある。

「…骨董品…？」
　なんでそんなものがこんなところに、というのが正直なところだが。
　店主は見当たらないのだが結構しっかりした造りである。が、屋台、というくらいだから人一人が引いて移動できる程度の店面積しかない。実際、ここも一応？カウンターめいた板が張ってあってもそれは三人が並べばそれでいっぱい、というくらいしかない。しかしその他のスペースは全部在庫として埋め尽くしてあるようで、ぱっと見ただけでもかなりの量、運んできているのが分かる。
「…土産物…？」
「まさか。ここはれっきとした骨董品扱ってるよ、おネーさん」

　裏手で作業していたらしい、長身の若い男性が姿を見せる。木製のパイプをくわえて、ちょっとやさぐれた印象。
「まいど」
「あ、失礼。こんなところにこんなものが、と勝手に思ってしまって…」
「…フォローになってないよルチア」
「ルチア？」
　手にしていたパイプを、ちょい、とくわえ直す。
「あんた…もしかしてルチアーノ・エンコかい？　ニンダスのダブリナールの？」

「局長の…知り合い？」
「時々だけど、資料の提供なんかもやってるんだ。ノスクルバーグのノースビル商会の本店、がな。お供ってことで俺もちょくちょく会って話してるんだ」
「ほう。ということはここは支店、というわけか…えっと…？」
「失礼。エドガー、エドガー・ノースビルだ。ここでは支店長ってことになるかな」
　がしっと握手。
「こちらこそ失礼した。それがしはクモキリヤ。…それ以上は勘弁願いたい」
「あ、なるほど。見たところイルトンランドの行商ルートセラーだな。てことは…おっと、これ以上の詮索はヤボってやつか」
「そうしてもらえると助かる」
　と、苦笑い。
　…やっぱあっち関係かなあ…クモキリヤって
　と、ドリスもなんとなくは見当がつくのだが、もちろん口には出さない。

「あたしはドリス。ドリス・アンフェルン。よろしくね、エドガー」
「こちらこそ、ドリス。うーーん…あんたは…失礼だが…もしかしてサウザムランド出身かい？」