TheRootSeller 外伝 6 「魔法使いを探せ！」[3-12]

「それ、局長もやってたネタ。ソグール人の話」
「ありゃ。やっぱりあの人も同じこと思ったのか。これも門前のコゾウってやつかね？」
　…結構メジャーな話なのかな、あたしのソグール人由来疑惑
　その割にはドリスは聞いたことがない。自分の顔がどっか南方系？だなー、と思ったこともほとんどない。ただ、言われてみればサウザムランドに行くとなんとなく雑踏になじみやすい、とかちょっと思ったことがあるくらいである。…それにしたって大した感覚ではない。
「ねえ、あんたにもそう見える？　あたしの顔って南方系かな？」
「素地がかすかに、な。しかしあまり気にすることでもあるまいに。それがしの顔などどうじゃ？　イルトンランドに多いかのう？」
　言われて見直してみるが…？
「なんだかよく分かんないね」
「はは。そうだろう、そうだろう。多分にイメージの問題なのだ。些末なことよ…」
　…まあ、そうなんだけどね
　自身のルーツがよく分かってない、捨て子だった人間にとってはなんとなくでも気になるところではあるのだ。

　エドガーの支店は骨董品といっても軽量なものを主に扱っている。屋台、という場所柄これは仕方ないことではある。小物や装飾品などがちんまりと並べられてある。
「一応目録もあるんだぜ」
　目録、と言ってもそこまで大仰なものではない。紙切れ一枚、ぺらっとしたもの。
「できる範囲でなら配達も可能だし本店での取り置きもできるって寸法さ」
「へー…なるほど…ね、クルガ紋様関連って扱ってる？」

「クルガ紋様、ね」
　やや目を細めて、目録用紙をじっと見つめる。
「目録にはないかな」
「…うーん…だなあ、俺の方ではちょっと扱ってないな」
「パウカイ獣紙でもいいんだけど？」
「それも…うちにはないが、本店行きゃあるかな。…なんで必要なんだい？　好きなのかい？」
「いや、まあ…ね」
「そう言えばそもそもはそんな話でしたね」
「？なんの話だ…？」

　パイプの刻みタバコを詰め直すエドガーと、屋台に設置してあるスツールに腰を下ろしたままのクモキリヤ。

「なるほどのう」
「ダナーブ文字ねえ」
「そもそもはそんな話だった、ってことなんだけど」
「どうしても欲しいってんなら本店に問い合わせてみるけど…時間かかるぜ？」
　腕組みしながら、何度かうなずくエドガー。
「いやいや、そこまでは…大丈夫。知り合いがちょっと…てな話でもあるし」
「あんたが欲しいんじゃないってか？」
「ダナーブ文字はあたしたちがそもそも追ってたんだけどねー…ま、色々あってクルガ紋様とパウカイ獣紙も好きって子も知ってるってとこ」
「殊勝なことだな」
　荷物の整理なんか始めているクモキリヤ。
「パウカイ獣紙のことは少しは知っておる。…どこぞの村だったか。ノルザムランドの…何だったか。そこで作られておるとか…いや」
　そこで手を止める。
「そうか、だからヴェーラ村、か…！」
「そゆこと」
「何のことです？」
「あんたの件とは別に、こっちはこっちでヴェーラ村に用があるってこと。依頼でね」

「…そろそろ先に進もっかね」
「そうだな」
　よいせ、と立ち上がる。
「世話になった。何か買っていきたいところだが…荷が増えるのが、ちと、な」
「気にすんな。俺も面白かったしな。そうだ、北へ向かうんならこの先にちっと面白いもんがある。あんたらなら気に入りそうだ」
「ほう？」
「ま、進んでみろって話だ。今からだと…夕方前には着くな。その頃合で着くカマラってとこでエドガー・ノースビルの知り合いだって宿屋で言ってみたらいい。なんかのタシにはなるだろうよ？」