TheRootSeller 外伝 6 「魔法使いを探せ！」[3-33]

「で…結局どーするんです？　ゴミ捨て場はあったわけですが」
「ここを中心に探すのよ」
「え？」
「だから…ここを中心に探すの。具体的には古そうで立派そうな建物、てなとこかな」

「…あによ、その目」
「いや…ドリスさん…こんな歴史ありそうな町ですよ？　古い建物なんかそれこそ掃いて捨てるくらいありますし、そこへさらに立派そう、なんて…」
「それがね。薬協てのは古い建物に入ってることが多いのよ。それもゴミ捨て場とかそういう施設の近くに、ね」
　周囲を見回す目に余念がないドリス。
「なんか理由でもあるんですか？」
「元々地元の有力者的なもんが運営することが多かったからね。そういう人物は古い建物に住んでることが多いし、ゴミ捨て場てのも公共の施設の一つじゃない？　そういう場所の近く、てのも有力者にとっては有利なんじゃない？」
「なるほど」
「ま、あたしのカンみたいなもんだけどね。ただあちこちだらだら探し歩くよりは、まあ、マシってもんでしょ？」
「ははー、それはそれは御慧眼、恐れ入りまするー」
「分かればよろしいのよ。ぬあっはっはっは」

　果たしてカマラの薬協は奥まった路地のさらに奥にあった。ドリスの見立て通り結構古い建物である。
「でも結局そこらのおばちゃんに尋ねましたけどね」
「…それは言わないで…」
　薬協支部はルートセラーとは違って施設名を表示しなくてもいいことになっている。どこそこ薬協支部ココ、とそういうのがないので分かりにくいのは事実ではあるが…ここは飲食店を兼ねているのか、飲みものの意匠を彫り込んだ看板の下に小さく『薬協』と書き込んだ看板？が下がっていたりする。
　そのためか古い建物ながら人の出入りが結構あるようである。時間的にもそんなものなのかも知れない。

「早速入ってみましょうよ」
「うん」
　内装は落ち着いた喫茶店、といったところか。ドアを開けるとテーブルがいくつかあって、小さいながらもカウンターもある。揃いのシックな装いの従業員が静かにサービスしている、そんな店である。
　しかし薬協らしい要素もちゃんとある。カウンターには掲示板が置いてあって、メモがいくつかピンで刺してある。
「あ。やっぱりやってるじゃないですか。聞いてみましょうよ？」
　カウンターには品の良さそうなお姉さん。
「…うん。そう…なんだけどね…」
「…何か、あるんですか？」
「そうね…これもただのカン、なんだけど…あの古銭市場のことは噂で聞いた程度にしておいて、ちょっとボカした方がいいんじゃないのかな、って。何せ割符使うくらいのアヤシイ場所っぽいし」
「…ですね。じゃあ、古銭の調査に来た、てことにして…ドリスさんもルートセラーてことは隠しておきましょう。私達はニンダスから来た学者とそのお手伝い、ということで。ウソじゃあ、ありませんし」

　ということでちょいボカして身構えながら古銭のことを聞いてみたのだが…。
「ああ、それならジョンソンさんに聞くといいですよ。ジョン・ジョンソンさん。この町でも有数のコレクターですし」
　結構あっさりと出てきた。
「えっと…その方はどちらに…？」
「宿屋街にあるタイクン亭という宿泊所の主人ですよ。タバコ屋も兼ねていつも作業しているので、いつもそこにいるかと」
「タイクン亭…」
　なんかどっかで聞いた気がするなー、とか思ってたドリスだったのだが。
「あーー…はいはいはいはい、ありがとうございます、あー…あそこか…」

　礼を言って、さっさと薬協から出てしまうルチア。
「どうしたってのよ、知ってるの？　その人？」
「知ってるも何も、ドリスさんも会ってますよ」
「いつ？」
「今朝」

　果たしてあの簡易宿屋に戻って来た二人。オヤジはタバコの葉を包む作業に余念がない。
「ねえ。もしかして…古銭市場って…知ってる？　エドガー・ノースビルて人のお勧めっちゃあ、お勧めなんだけど…」
　すると。その手を止めてニヤっと笑うのだった。
「ああ？　なんで先に言わねえんだ…エドガーの旦那の知り合いかよ？　そんなら少しはサービスしてやったってのによ？」