TheRootSeller 外伝 6 「魔法使いを探せ！」[3-36]

「とりあえず時間、空きましたね…」
「…うん」
　明日、ということだがまだ昼過ぎたくらいである。なお、この時点でアザミナとクモキリヤはあの武器屋でてんやわんややってたりする。
「もう少し、町を見て回ろうか？」
「ですね。なんか面白いもんでもあるかも知れませんし」

　古い町並みなのである。
　町の真ん中に大木が立っているのは見ての通り。その周囲はちょっとした広場になっているが、特に整備されていたりするわけではない。店が並んでいたりするわけでもなし、大木にも囲いがあったりするわけではない。
　ただ、木の周りはかっちりとした石が敷き詰められそれは丁寧に整備されてるようにも見える。
　町の通りにも同じように敷き詰められ、移動の補助ともなっている敷石だが…大木の周辺はまた少し違って見えるようだ。

「…ここら辺りだけ、結構頻繁に敷き直してますね」
「へー…」
「ほら。ここです。ここ。明らかに色と形が違うじゃないですか」
　年月を経た石はどんどん暗くくすんだ色になっていくし、上を人も馬車も通るものだから、どんどんすり減って角も丸くなっていく。…が、この辺り、大木の周りの敷石は（使用感はもちろんあるが）明るく角もまだまだはっきりして見える。
「あ、ホントだ」
　そっと触ってみるドリス。見た目だけではなく触れた感触も全然違う。
「やっぱりこの大木が大切、ってことかな？」
「それもあるとは思うんですが…ちょっとうがった見方もできるんですよね…」
「ほう？　うがった見方、ねえ…？」

　ルチアは再び大木の前に。そしてしっかりとドアノブを握ってみる。
「…うん。やっぱり開きませんね」
　なお。実は結構人通りの多い区画なのだが、こういう行動しても別に誰かにとがめられたりはしない。実際、さっきまでここで子供たちがかくれんぼの鬼やってたりおいかけっこしてたりするくらい。
「開かないドア、か…」
「一種の象徴なのでしょうね。大昔の。で、そこへ最近の風習を持ち込む、と」
　今度はドアを背に真っ直ぐ、ゆっくり歩き始める。視線を足元に落しながら。そして…ある地点まで歩くと、やはり足元を見ながらまたゆっくりと歩き始める。…それを見てた子供たち三人がルチアの後ろにぴったりくっつくように並んで歩き始めたりする。
　…水鳥のヒナかい

　ルチアはゆっくりと広場を歩き…その間子供たちも黙って彼女の後ろをくっついて歩く。最終的に最初の地点に戻ってきたから四角形を描いたことになる。
「…ふう」
「ねえねえ」
　ここで真後ろにくっついてた子供がちょいちょい、とルチアの服の裾を引く。
「おまつり？　これっておまつりだよね？」

　それを聞くと。一瞬だけ視線を宙にさ迷わせて考え込むような表情になって、すぐにニマっと笑みを浮かべるルチア。そっとしゃがみこんで
「そ。お祭り。時々やってるんでしょ？　いつ頃かな？」
「えっとね。おまつりは…えっと？」
「年に二回だろ。ほら夏と冬だ」
　その後ろの年長っぽい少年が呆れたように腕を頭の後ろに組む。
「こんな風に毎回歩いてるじゃねえか、あの祭りん時に。忘れたのか？」

「わすれてないよ、だって、おまつりって、いっぱいいっぱい食べられるじゃん。あんなたのしいの、わすれるわけないよ！」
「どうだかな。お前、忘れっぽいからな」
「にいちゃん、ひーどーい！　きらいー！」
「へ、事実ってやつだろ？　別にオレは嫌いでもいいしな」
　…うわー…お兄ちゃん、ひどいっつーか、からかい慣れてるっつーか…